« 『サントと死のホテル』( 『Santo En el Hotel de la Muerte』1961年) | トップページ | 『The Wild Women of Wongo』1958年 »

2006年4月 3日 (月)

『死体を売る男』(『The Body Snatcher』 1945年)

 

『死体を売る男』(『The Body Snatcher』 1945年)

 死体を盗掘して生計を立てている不気味な男をボリス・カーロフが好演、いや、この人はこんなに出来る役者だったのかと再認識させられました。こんな良い役者さんが後年、よぼよぼしながら『恐怖の密室』とか『Snake People』などのしょうもない映画に出るようになる。世は無常なり。

 警告、警告、このDVDのリージョンは1です。したがって日本国内のDVDプレーヤーでは再生できません。警告、警告。

舞台は1831年イギリスのエジンバラ。町を行きかう馬車、街角に立って歌を歌ってお金を稼いでる歌女、そして墓場(笑)。この墓場で鬱々と会話を交わしているのが医学生、ドナルド・フェティス(ラッセル・ウェイド)と老婆。医学生は医学の大家マクファーレン博士(ヘンリー・ダニエル)に師事していたのですがお金が続かなくなってもう田舎へ帰ろうかというところ。老婆は息子を亡くしてのち、愛犬と墓を守っているのであります。「近頃は墓場もぶっそうになってねえ」とボヤく老婆。あ、死体盗みということですね(笑)。

 さっと場面は変わりましてここはマクファーレン先生のお屋敷。馬車が乗り付けて車椅子の少女とその母親を降ろすのです。この親子はミセス・マーシャ(リタ・コーディ)とジョージアナ(シャリーン・モフェット)、事故で下半身麻痺となったジョージアナをマクファーレン先生に治療して貰おうという目的。ちなみにこの馬車の御者がグレイ(ボリス・カーロフ)、親子を迎えに出てきたマクファーレン先生の愛人メグ(エディス・アトウォーター)と目配せします。むむっ、ボリス・カーロフというだけで十二分に怪しいのにこの目配せ。絶対ろくなもんじゃありません(笑)。

 二人を迎えたマクファーレン先生、怖い顔でジョージアナに「どこが痛いの」でも怯えたジョージアナは「あたし、わかんない」としか言わないの。お手上げという態のマクファーレン先生であります。ここで現れたのがあの医学生フェティス、先生はやさしげな彼ならばジョージアナも安心するであろうと考え彼に相手をさせるのでした。するとジョージアナ、少女とはいえやはり若い男が良いと見えて「あたしね、背中の下のほうと足が痛いのよ」マクファーレン先生はジョージアナの体を調べて「奥さん、これは脊椎部分に腫瘍ができておりますな。手術しか治療の方法はないでしょう」しかし、マクファーレン先生、こんなことを言っておきながら「私は医者というより教育者です。多くの医学生を教え導かねばならない。だから手術をしている余裕はないのです」ああ、可愛そうな親子を追い返しちゃった。

 そんなマクファーレン先生に「僕、もうお金がなくなったので田舎に帰ります」と申し出たフェティス。当然、「ああ、いいよ、いいよ、帰りたまえ」と言われるものを覚悟していたのですが、先生から「じゃあ、君、僕の助手として働くかい?報酬を払うからそれを学費にあてなさい」という意外な返事。フェティスは大喜びでその申し出を受けるのでした。先生とフェティスは地下の実験室へ降りていきます。そこでは下働きのジョセフ(べラ・ルゴシ)が解剖台をじゃあじゃあ水洗いしております。彼はどうもフェティスと先生の会話に聞き耳を立てている様子。それに気づいたマクファーレン先生、「お前、こそこそ人の話聞いているんじゃないよ」と怒鳴りつける一幕。後でこれをうらみに思ったべラ・ルゴシが・・・ということになるのでしょうな。そしてマクファーレン先生、フェティスに「じゃあ、死体標本の入手方法を教えておこうか」「ええっ?それは決まっているんじゃないのですか」「いやー、正規の奴だと数が足りないんだよねえ」おお、話がホラーになってきましたなあ。

 その夜がらごろとグレイの馬車がやってきた。彼は出迎えたフェティスの手を借りて今しがた盗掘してきたばかりの死体を地下室へ運び込みます。そう、マクファーレン先生のところの死体標本のほとんどをこの人が墓から盗んできていたのですなあ。やっぱりボリス・カーロフ、ろくなもんじゃない(笑)。グレイはフェティスに「へへへ、新しい助手かい。あたしと先生のつきあいは長いんでねえ」フェティス、彼の臭い息に閉口しながら報酬の10ポンドを支払うのでした。「こいつは埋葬されてから一週間とたっていない極上のブツだ。楽しんでくんな」がらごろ馬車で帰っていくグレイ。

 翌日マクファーレン先生の代わりに授業をやっていたフェティス。べラ・ルゴシから「お客様だよ」と知らされます。そのお客様というのが一旦はマクファーレン先生に手術を断られたもののあきらめきれないミセス・マーシャだったのです。彼女はフェティスにマクファーレン先生に手術してくださるようお願いしてくださいと頼みにきたのでした。ジョージアナの病状は悪化するばかりで手術なしでは回復の見込みまったくなし、これを聞いたフェティス、つい情にほだされて彼女の頼みを承諾したのであります。

さあ、どうしようかと思い悩んで外に出たフェティス、あの墓地になにやら人が集まっているのを見てびっくり。何事かと聞きますと、なんとあの老婆の息子の死体が盗掘された。そして墓を守っていた犬が殺されたというのです。「がーん」呆然とするフェティス。すると昨晩グレイが持ってきたのは老婆の息子の死体だったのか!彼は屋敷にとって帰ってマクファーレン先生に抗議するのですが、「まあ、医学の発達のためには仕方ないだろ」という言葉に反論できず、そのまま見過ごすこととなったのです。

 さて、あのマーシャの頼みはどうなったかというといいますと…。マクファーレン先生とフェティスがたまたま入ったレストランにグレイがいたのですな。大声で「おお、マクファーレン先生、トディ、こっちにきなさらんかい」と呼ばれてしぶしぶ同席することになった。先生、「グレイ、トディって呼ぶなとあれほど言ったじゃないか」トディというのはどうも先生の渾名らしい。この席で例のマーシャの頼みを持ち出したフェティス、当然ながら駄目だ、駄目だと断られてしまいます。しかし、ここでグレイが「ははあ、そんなに手術するのが怖いのですか」と挑発、それに乗せられた先生が思わず「馬鹿な、そんなことがあるもんか。よし、フェティス、手術を引き受けよう」こういうことになったのです。フェティス、思わず心の中で「グレイ、グッジョブ!」と叫んだのでありました(笑)。彼は次の日にあの親子を呼び出してこの吉報を伝えます。

 しかしマクファーレン先生ったらこの後すぐに「ごめん、フェティス、あれ、酔って気がでかくなってたんだわ。手術するなら死体を解剖して脊椎の当たりを前調べしとかなきゃならないけど、死体ないんだもん、勘弁してよ」またフェティス、がーん。「えー、もう僕、マーシャに手術OKって言ってしまったんですよ」「そんな事言っても駄目なものは駄目なんだよ。どうしてもというなら死体がないと駄目だ」もうマクファーレン先生とりつくしまがありません。思い悩んだフェティス、彼は自らグレイの家へ赴き、死体盗みを依頼しようと決心するのです。

 夜の街をグレイの家を探してさまようフェティス。途中、あの歌女に出会って「君、グレイの家知らない?」女は「良く知らないけど、あっちかし~ら~」何も歌女だからと言って歌って教えなくてもいい(笑)。フェティス、なんとかグレイの家を見つけます。そして死体を頼むとグレイ、「うーん、ちょっと時間が掛かりますぜ。墓地の警戒も厳しくなったし、こりゃ、少しホトボリをさまさねえと」がっかりして帰っていくフェティス。しかしグレイ、その後姿を見て考え直したのか、馬車を駆って出かけるのでありました。歌を歌っている歌女、「こんな別嬪見たことないとかなんとかおっしゃ」ぽくっ、あ、女が静かになった(大爆笑)。

墓地が警戒されて駄目ならそのへんの女を殺害して死体を調達、さすがボリス・カーロフ、やることがエグイわ。

 がらがらがら、また馬車がマクファーレン屋敷にやって参りました。思わぬ死体の搬入に大喜びのフェティス。グレイの腕を取って「ありがとう、助かったよ」しかし、死体をみたフェティスは「げぇっ!、こ、これあそこの通りで歌っていた歌女じゃん。俺、彼女に道聞いたぞ、グレイ、殺したな!」「とにかく死体には違いないさね。だから金くんな、払わねえってんなら・・・」グレイに凄まれついついいつもの10ポンド払っちゃった。ほくほくしながら帰っていくグレイ。フェティスは警察に通報しようとしたのですが、マクファーレン博士に「おいおい、君は死体の調達を頼みしかも金まで払っているのだぞ。共犯じゃないか」と止められてしまうのでした。「しかし」と迷うフェティスに博士は「それに殺しじゃないかも知れんぞ。ほうらみなさい、この額の傷を、この女は寝ている時にベッドから転げ落ちて死んだのではないか」んな訳ねーだろ(笑)。ついにフェティス、マクファーレン先生に丸め込まれて通報をしないままとなります。

 歌女の死体を解剖して脊椎周りの構造を把握したマクファーレン先生、さっそくジョージアナを手術です。「あれをこう切ってそれをこう繋いでひっつけて、あ、それ、それ」と医学生達に説明しながらの手術。これが大成功に終わってほっとするマクファーレン先生です。彼はグレイに「これであんたとの関係も縁切りさ」しかし、グレイは壮絶な笑みを漏らして「ははは、そう上手くいきますかな」また怪しい動きを見せる、べラ・ルゴシ。彼は馬車に乗り込もうとするグレイについと近寄ってきて「ちょっとお話したいことがあるんですがね」ここで丁度フェティスが戻ってきたので、べラ・ルゴシ、こそこそ隠れちゃったのですが。

 フェティス、実はマーシャとジョージアナのところへ行っていたのです。ジョージアナの経過を確認するためだったのですが、なんとジョージアナは未だ歩くことができないというのです。「なんだと、手術は完璧だったはず」驚いたマクファーレン先生はジョージアナを再診察します。そして車椅子の上の彼女に、「歩け、歩くのだ、歩かないかこのガキめ」当然ながらジョージアナ、おびえてうぇーんと泣き出しますな(笑)。結局ジョージアナを歩かせることができなかったマクファーレン先生、がっくりとなって酒場で沈没。

 ここにやってきたのがグレイですわ。マクファーレン先生最初は妙に愛想が良くて「私はもう駄目だ。ちゃんと骨と骨、神経と神経を上手く組み合わせて手術を成功させたのにあの少女は歩けない、何故だ!」グレイはにたにたして「そりゃ、お前さんが悪いのさ。ノックスと私が教えた知識はある。でもあんたはそれを理解していない」かっとなったマクファーレン、再びグレイに「もうお前、姿見せるな、来たらぶっ殺す!」と叫んだのでした。

さて、この後先ほどグレイに何かを言いかけたべラ・ルゴシが登場。彼はグレイの家を訪ねます。そうして言ったことにゃ、「あんた、人を殺して死体を売ってるだろう、黙っていてほしければ金を寄こせ!」つまり脅迫に来たと。このピンチにもグレイはまったく動じません。彼はルゴシにとりあえず30ポンド渡すと、「なあ、一緒に死体盗みの仕事をやらないかね。ノックス先生の時には大10ポンド、小8ポンドで売っていたぞ。大もうけしたもんだ」え、ノックス先生って誰?はい、あっという間にこの餌に食いついたルゴシ、「ん、いいねえ、それ、どうやってやるの?」「んふふふふ、教えてやろう、こうするのさ」言うなりルゴシに飛び掛るグレイ。大きな手のひらをもがくルゴシの顔面にあてがいぐいぐいと押し付けます。ルゴシ、まもなく窒息して死んでしまいましたとさ。そしてルゴシの死体をずうずうしいことにマクファーレン先生のところへ持っていくという・・・。死体を見てぎゃっと飛び上がるマクファーレン先生とフェティス。ついに耐え切れなくなったマクファーレン先生、死体の始末をフェティスに任せてグレイの家へ押しかけます。

ノックス先生はマクファーレン先生の師匠であったらしい。

 ここでメグからフェティスに二人の腐れ縁について説明。マクファーレンはノックスの助手だった時にやっぱり死体を売っていたグレイとであったのです。その関係が今に至るまで引き継がれていたのであります。メグはフェティスに「悪いことは言わない。あんた、もうここから出て行きなさい。暗い穴があの二人を待ち構えている。もう救いようがないわ」

 マクファーレン先生はグレイに金をやるから私の前から姿を消してくれというのですが、グレイ取り付くしまもなし。マクファーレン先生ついにブチ切れてグレイに襲い掛かります。そうして取っ組み合いがえんえんと続くと。この戦いで優勢なのはグレイです。彼はマクファーレンの首を絞めながら「俺にお前を殺させないでくれ、この関係が俺の生きがいなのだ、これがなければ俺はただのクズなのだ」なんだか意味深な台詞ですな(笑)。そしてばたばたやっているうちに一方が動かなくなった。勝った方はその死体を担ぎ上げるとマクファーレンの屋敷に戻ります。このへん暗闇となってどちらが勝ったのか分からないという細やかな演出。ロバート・ワイズ監督やりますねえ。

 屋敷に入ってきたのはマクファーレン先生でした。勝ったのはマクファーレン先生だったのです。彼はメグに「私はついに奴から解放された。奴は解剖して医学生の授業に使おう」酷いこというなあ(笑)。「彼の馬車も市場でうっぱらってしまおう、これですべては終わったのだ」メグ、白けた顔で「いや、そんなことないと思いますけど」

 さて、マクファーレンのところから逃げ出したフェティスがどうなったかというと、またマーシャとジョージアナと会っております。マーシャと二人で「ねえ、今度食事でも」「あ、でもジョージアナが」「誰かに預けちゃえばいいじゃん、ねえ行こうよ」じゃなかった(笑)、「マクファーレン先生の手術は完璧だったはず」「ジョージアナは痛みを恐れているんです。歩けばまたあの痛みがぶり返すのではないかと。その恐れまではマクファーレン先生にも治せなかった」こういう会話をしておりますと、ジョージアナ、馬がひんひん鳴くのを聞いて「あ、お馬さんがきたわ」あ、馬の姿を見ようとして知らず知らず、ジョージアナ立っちゃった。歩いちゃった。大喜びの親子とフェティス。これでハッピーエンドかと思いきや・・・。

 よせば良いのにフェティス、この吉報をマクファーレン先生に伝えようとしたのですなあ。馬を売るためにマクファーレン先生が投宿していた宿屋に押しかけて「先生、先生、ジョージアナ、歩きました。やっぱり先生は凄い」「おお、そうか」現金なものでマクファーレン博士、大喜びする訳です。「ふふふ、グレイだ、あいつがいなくなったから何事も上手くいくようになったのだ」先生、それどころか宿にお葬式帰りの一家がいるのを見つけて「おい、フェティス、あの一家の死体をやるぞ」ええー!まったく懲りていないんです、この先生(大笑い)。

 早速墓地へ行って死体、女を掘り出す二人。程なく穿り出した死体を馬車に乗っけて逃走します。この時怪しかった空模様がついに崩れて激しい嵐となりました。それに構わず馬車を走らせるマクファーレン先生。と、彼の耳に「トディ、トディ、私だ、トディ」という声が聞こえてきた!びっくりした先生、馬車を止めるとフェティスに「何か聞こえなかった?」「いや、何も」おかしいなあと首をひねってまた馬車を走らせます。するとほどなくまた彼の耳に「私だ、グレイだ、私からは逃げられないぞ、逃げられないぞ、絶対に、絶対に」「わあっ」また馬車を止めます。そして何事かといぶかしんでいるフェティスに構わず死体を包んだ布を開けて顔を確認すると、「げぇっ、これはグレイ」掘り出した女の死体がいつの間にかグレイになっていた!ぎゃああああとパニックになって馬車を発進させるマクファーレン。フェティスは振り落とされてしまいます。急発進の反動でグレイの死体がうわーっとマクファーレンにもたれかかってきて「ひいいいい、らくだか、お前は!」半狂乱となったマクファーレン、さらに馬車を飛ばしてついに崖から転がりおちてしまったのです。

 フェティス、助けようとしたのですが、マクファーレンはすでに絶命。そして彼が死体の顔を改めますと、その死体はグレイではなく女に戻っていたという…。エンドマーク。

マクファーレン先生とグレイの相互依存。こんな心理的に深いネタをまさかホラー映画で味わえるとは。いやいや実に面白かった。

モノクロ・スタンダード、モノラル音声。画質・音質はなかなかのレベル。英語字幕つき。『The Body Snatcher』とのダブルフィーチャー。Turner Home Ent DVD

エロの冒険者
       HOMEPAGE http://homepage3.nifty.com/housei/
      SFシネクラシックス 輸入DVDでみるSF黄金時代(笑)
   バックナンバーはこちらhttp://homepage3.nifty.com/housei/SFcineclassics.htm

|

« 『サントと死のホテル』( 『Santo En el Hotel de la Muerte』1961年) | トップページ | 『The Wild Women of Wongo』1958年 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 『死体を売る男』(『The Body Snatcher』 1945年):

« 『サントと死のホテル』( 『Santo En el Hotel de la Muerte』1961年) | トップページ | 『The Wild Women of Wongo』1958年 »