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2006年6月29日 (木)

『ロイドの用心無用』(『Safety Last!』 1923年』)

 

『ロイドの用心無用』(『Safety Last!』 1923年』)

 チャールズ・チャップリン、バスター・キートン、ハロルド・ロイド、この三人を三大喜劇王と称します。このハロルド・ロイドの作品でもっともスリリングかつ危険かつピカレスクかつオマージュと言われる(ピカレスクのあたりから意味が分からなくなる)のがこの『ロイドの用心無用』、さあ、はじまり、はじまり。

 警告、警告、このDVDのリージョンは1です。したがって日本国内のDVDプレーヤーでは再生できません。警告、警告。

冒頭今しも絞首刑に処されようとしているロイド。彼にしがみつくようにして別れを惜しんでいるのは母と彼の婚約者ミルドレッド・ディヴィスであります。時間が来て処刑台につれていかれるロイドと思いきや、実はこれはグレートベンド町の駅。あの処刑台に見えていたのは列車への連絡塔だったというギャグ。ロイドはここから列車に乗ってニューヨークへ、そして一旗上げてミルドレッドと結婚するという夢を抱いていたのです。「恋人よ、僕は旅立つ、東へと向かう列車で、華やいだ街で、君への贈り物、探すつもりだ」とどこかで聞いたようなことを言うロイド。ミルドレッドも「いいえ、あなた、欲しいものはないのよ。ただ都会の絵の具に染まらないで帰って」てなことを言いますな。

 ロイドは列車に飛び乗り一路ニューヨークへ。

 ロイドはニューヨークでビル・ストローザーという男とルームメイトになります。しかし二人の懐はいつもすかんぴん。家賃の支払いも遅れがち。そんな中息せき切って戻ってきたロイド、ビルに素敵なアクセサリーを見せるのでした。「これ、故郷の彼女に買ってきたんだ」ビルは「でもこれチェーンついてないじゃん、ついてないとなんかカッコ悪いよ」「チェーンは後回しなの。とにかく送って彼女を安心させてやるの」その時ビルはレコードプレイヤーがなくなっているのに気がつきます。するとロイドがすまなそうに懐から取り出したのが質札。「レコードープレイヤー 12ドル」と書いてあります。「なんだ、質入しちゃったのかい、実際お前はしょうがないねえ」と呆れるビル。ロイドは彼が持っているレコードを見て「それをあったらチェーンもつけられたのになあ」「おい、よせやい!」この時とんとんとノックの音。大家さんがやってきたのです。とたんにコートを着て洋服掛けにぶら下がる二人。大家さん部屋に入ってきますが、洋服掛けの二人には気がつかず「モー、いつもいないんだから」とボヤいて帰っていくという・・・。

 ロイドからのプレゼントとアクセサリーを受け取ったミルドレッド。手紙には「上手く行っているからもうちょっと待っててね」と書いてある。「ああ、ロイド、私、待ちきれないわ、早く会いたい!」目をハートマークにするミルドレッドでありました。

 ロイド、洋服屋に就職します。朝もはよから張り切って出社するロイドですが、うっかりタオル交換業のトラックの荷台にこしかけたらばたん、ドアが閉まって閉じ込められちゃった。そのままトラックは発進、ロイドは就業間際というのに遠く離れた場所に連れて行かれてしまったのです。ようやくトラックから脱出したロイド、早く会社に行かないと遅刻で首にされてしまう!まずは満員の路面電車にむりやり乗り込むロイド。でもこの路面電車、スピードが非常に遅い。これじゃ間に合わないというのでロイド、走ってきた車に合図、電車から直接飛び移ろうとしたのです。でもあえなく失敗。驚いたドライバーは親切なことに車を駐車してロイドを助けにいきます。そして車に乗り込んでさあ出発と思いきや運転手、うっかり消火栓の前に車を止めておいたものですから巡査に駐車違反の切符を切られちゃった。これを渡されたロイド、済ました顔で運転手に渡すと「ほな、サイナラ」、唖然とする運転手。

 次にロイド、止まっている救急車を見つけます。いきなり路上にバターッと倒れて「ウウーム、苦しい」これでまんまと救急車に乗っちゃった。救急隊員が脈を取ったり聴診器当てたりするのを尻目にちらちらと外を見て、「あ、ついた、運転手さん、次の信号で止まってください」ばーっと降りていく、ロイド。これまた唖然とする救急隊員。

 ロイド、なんとか会社についたのですが、すでに出社時間の午前8時を過ぎている。オマケにタイムレコーダーの前には怖い上司のスタッブズ(ウェストコット・クラーク)が頑張っています。見つかったら首です。一計を案じたロイド、マネキンに化けて配達の人に中へ運び込んで貰うのでした。そしてそっと手を伸ばしてタイムレコーダーの時間を戻して打刻。すきを見て販売カウンターにもぐりこんでさあ、一件落着。仕事だ、仕事。

 さて土曜日、半ドンでおまけに待望の給料日。ロイドも週給15ドルを貰ってにっこにこ。しかし終業のベルが鳴っても帰らないお客さんがいて、ロイドにあの生地見せて、うん、あれもそれもこれも、際限なく生地を出させるのでした。その挙句に「一番最初に見せて貰ったあの柄がいいわ」ロイド、ムカッとしますが(笑)お客様は神様です。最初の生地を引っ張り出して切ろうとします。するとさらに、「あ、そんなに切らなくってもいいの、ただのサンプルでいいんだから」ロイド、がっくりします。

 ようやく仕事から解放されたロイド、ここで偶然に故郷の知り合いに再会します。彼は警官として働いていたのでした。「おー、お前、ロイドじゃん」「へー、あんた警官になっていたの、久しぶりだね」さっそくこの出会いをビルに吹聴するロイド、彼は警官を指差して「あれ、おれの友達なんだ、警官だぞ、すごいだろ」それでちょっといたずらしても友達だから大丈夫だよといささか訳の分からないことを言い出します。ロイド、警官の背後にしゃがみこんでビルが前からとんと押すと、警官見事にひっくり返った。「わははは、俺だよ、いたずらだ・・・」ロイド、仰天します。友達のはずの警官が別人に入れ替わっていたからです。激怒して二人を追いかける警官。ロイドは素早く隠れて難を逃れます。ビルは高い建物にフリークライミング状態でぐいぐい登ってって、これ、怖いなあ、命綱も何にもないですよ、屋上までたどり着き、警官を振り切るのでした。警官、悔しがって「今度会ったら覚えていろ!」

 さてロイド、50セントのサラリーマン定食を食おうかと考えるのですが、隣の宝石店で「プラチナチェーン、本日限りの大安売り。半額ぽっきり!」このチェーンの値段が15ドル50セント、ロイドはさっき貰ったばかりの給料を全額だして、後は10セント玉を一枚二枚と出していきます。もうこれ払ったら所持金ゼロ。だから10セント玉払うたびに定食の見本のパイが消える、サンドイッチが消える、最後にコーヒーが消えて・・・というギャグ、チェーンは買えたけど腹ペコのロイドでした。

 チェーンを受け取ったミルドレッドはまた大喜び。ついていた手紙にも「僕は出世したから」なんて書いてある。ここでロイドのママが世界一余計なことを言い出します。「若い男が大都会でお金を持ってたった一人、これはアブナイわ、わたしだったら彼を放っておかない」ミルドレッド、「分かったわ、私、決心した、もう待たない、ニューヨークに行きます」

 その頃ロイドはバーゲンセールで大忙し。つめかけたおばさんたちにやいのやいの引っ張られて服装もうぼろぼろ。これをスタッブズさんに見咎められて「君は服装を正してきたまえ」とお説教。しかしその後でロイドに代わってカウンターにたった男もあっという間にぼろぼろにされてしまうのですが。

 こんな時にミルドレッドがやってきた。ロイドは喜びますが、彼女は彼が大出世したと思っているのです。その期待にこたえるため突如として店内で横暴に振る舞いはじめるロイド。店員捕まえて「あー、君、君、お客様は神様なんだよ、そこんとこ分かっておるかね」と説教したりしております。みんな、一体どうしたのだと不思議かっております。この時、支配人に呼ばれたロイド、また服装について注意を受けたのですが、支配人室から出てくる彼をみたミルドレッドが「ええ?あなた、支配人になったの、凄いわねえ」と勘違い。弱ってしまうロイドです。

 ミルドレッド、ロイドにあなたのお部屋が見たいと言い出します。ロイド、支配人が外出したのを見計らってミルドレッドを支配人室に案内。ゴージャスなオフィスに興奮したミルドレッド、なんと、机についていた呼び出しボタンを押しちゃったのです。

 店員達がわらわらとやってきます。これはまずいとロイド、何食わぬ顔で彼らに加わっていかにも私も呼ばれたのですという振り。これが効を奏してようやくピンチを逃れたロイド。彼はミルドレッドを外へ連れ出そうとしたのですが、彼女は「あ、私、財布あの部屋に忘れちゃった」「このあま…」思わず彼女の頭をはたきそうになるのですが、何しろこれは明るく楽しいドタバタ喜劇。ぐっとこらえて再び支配人室へ赴くロイドであります。

 しかし中に入れず支配人室の前でうろうろするロイド。その彼に聞こえてきたのは支配人と副支配人のこんな会話でした。「ああ、客集めのいいアイデアを出したものには1,000ドルのボーナスを出すのだがなあ」ロイド、この会話に激しく反応。彼は警官から追われたビルがするすると高い建物を登ったことを思い出し、そうだ、これだと手を打つのでした。そして支配人室に飛び込み「僕にやらせてください、きっとこのデ・ボア・洋品店の前を人で一杯にしてみせます」ロイド、それからビルに電話して「君、500ドルで12階建てのボルトンビルに登ってくれないか」「なに、500ドル、まかせとけ、ボルトンビルどころか天国にまで登ってやるよ」

 ロイド、大喜びでミルドレッドをホテルに向かうタクシーに乗せ「ダーリン、やっと僕らの夢がかなうぞ。明日結婚しよう。午後3時にここにきてくれ」

 しかし、映画の常で事がすんなり運ぶ筈がない。ロイドは新聞社を使って「ミステリー・マン ボルトンビルに登る、明日、午後2時!」という広告を出させるのです。この時使ったのが顔を白抜きにしたビルの写真。これを見たあの警官、ビルにしてやられた彼ですね、が「うぬー、彼奴か、今度こそ逃がさぬぞ」と張り切ってしまったのであります。

 さて、いよいよビル登りの開始が目前に迫りました。ロイドはビルを連れてボルトンビルに行こうとするのですが、「あ、あの警官が頑張っているぞ」困った挙句、ビルはこんなことを言い出します。「ロイド、君、とりあえず一階分登りたまえよ、2階で僕が君の帽子や上着着て入れ替わるから。そうすりゃ分からないよ」ロイド、不承不承ビルを登り始めます。ビル、建物の2階に行ってさあ、入れ替わろうとしたのですが、追いかけてきたのがあの警官。「うわあ、入れ替わるどころじゃないや、ロイド、君、もう一階分登りたまえ!」ビル、警官と延々追いかけっこです。

 ロイド、「聞いてないよー」とボヤキつつさらに登ります。途中、上の窓から撒かれたハトの餌を被ってしまい、それ目当てのハトにたかられて危うく転落死しそうになったり、スポーツ用品店の窓から落ちてきたテニスのネットが絡まったり、大ピンチの連続です。ここでミルドレッド、登場、愛するロイドが何故かビルに登っているのを知ってびっくり仰天。彼女もボルトンビルの中に駆け込むのでした。

 ぜえぜえはあはあ、なんとか時計台のあるところまで登ってきたロイド、するとビルがいきなり「よし、ロイド、良く頑張った、ここで交代しよう」窓をあけたからたまりません。弾き飛ばされたロイド、あわや転落死かと思われたのですが、なんとか時計台の針にしがみつきます。ジャッキー・チェンが『プロジェクトA』でオマージュ捧げたあの有名な場面ですね。ここから這い上がろうとするロイドですが、今度は文字盤が前に倒れてきた。下で見ている見物客の皆さんはもうはらはらどきどき手に汗を握っております。

見ている私もはらはらどきどき手に汗握っております。だってこれ命綱とか安全ネットとかなしですよ。落ちたらはい、それまでヨ、ですよ。

 文字盤からようやくのことで壁に取り付いて再び登り始めるロイド。上の階からビルがロープをたらして「おい、これを使うんだ」ありがたいとロイドがロープを掴んだ瞬間、また警官が来てビル逃げちゃった(笑)。当然ながら落下するロイド、さっきの時計台に逆戻りです。これはヤバイということでおっかけっこも忘れて二人でロープを引っ張るビルと警官。しかし張り切りすぎてロイドの頭がでっぱりに三度ばかり叩きつけられてしまいましたとさ。もう踏んだり蹴ったりのロイド、さらに彼のズボンにネズミが侵入します。「あひゃひゃひゃ」ネズミを追い出そうとして狭い庇の上でもがくロイド。下の観客は彼が踊っていると思って拍手喝采。ようやくネズミを追い出してまた登り始めるのです。

 なんとか屋上にまでたどり着いたロイド、上がろうとするのですが何故か設置してある風速計測器がぐるぐる回って彼の頭を一撃。ふらふらとなった彼はあっと思う間もなくビルから転落します。今度こそ、墜落死と思いきや彼の足にロープが絡まってぶらーんぶらーんと空中ブランコ状態になるのでした。そこをがっきと抱きとめたのがミルドレッド。感極まって熱いキスを交わす二人。隣のビルの屋上ではまだビルと警官がおっかけっこしています。映画はここでおしまい。

 映画史に残るビル登り。実はこの人1920年の『Haunted Spooks』の撮影中に小道具の爆発事故で右手の親指と人差し指を失っていたんですねえ。だからこのビル登りも義指をつけて撮影に挑んだのです。なんかもう言葉がありません。

 モノクロ・スタンダード、サイレント。画質はそれほど良くはありませんが、年代を考えれば立派なもの。『The Harold Lloyd Comedy Collection Vols. 1-3 (1923)New Line Home VideoDVDボックスセット。

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