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2006年12月 4日 (月)

『殺人豚』(『PIGS』 1972年)

 

『殺人豚』(『PIGS』 1972年)

 精神異常の女殺人鬼と食人豚という組み合わせ。ゲテモノの極みのような映画ですが、ストーリーに捻りがあって存外に面白かったですぞ。

父親にレイプされた娘が父親をナイフでメッタ刺しという大変に陰惨な事件で映画が始まります。この娘、リン・ウェブスター(トニ・ローレンス)は裁判で「あなたはホンモノのキチガイですから精神病院に入りなさい」と言われましてカマリロ州立病院に入院することとなりました。しかし、そこの看護婦と医者がもうウカツな奴らでありまして入院患者を放っといて逢引。あ、キスしやがった、ああっ、看護婦の白衣脱がせやがった、ひいいっ、は、はじめやがった。リン、この隙に看護婦の白衣を奪って変装、あっという間に脱走しちゃいます。というか、この医者と看護婦、とっととクビにしろ(笑)。病院から抜けだしたリンは車を奪ってひとっ走り。ついに田舎のチンケなカフェにたどり着いたのであります。オープニングクレジット。

 ここで流れる音楽の歌詞が「キープ・オン・ドライヴィン、キープ・オン・ドライヴィン」とそのまんまなのに早くも脱力する私です。

 さて、ここでまた新たな登場人物、フォードのピックアップトラックに乗っているザンブリーニ(マーク・ローレンス)。彼はトラックの荷台から布に包まれたアヤシイ荷物を降ろします。長くて中央からくたっと折れ曲がっているその様は何か丸めた絨毯のようでありますが、こんな映画でそんなものを運ぶ筈がない。死体ですよ、死体。彼は死体を豚小屋に運び込むと「うちの豚を放し飼いにしていたら寝ていた酔っ払いを見つけて食っちまったんだ、それ以来人間の味を覚えちゃったんだ」と実に説明的な独り言をしつつ死体をばらばらにして豚に食べさせたのです。このおっさんがリンがたどり着いたカフェの店主だったという・・・。

 どんな肉料理出しているか知れたものではありません。

 リンは白衣を捨ててカフェの中へ。彼女は店の表に張ってあったウェイトレス募集の張り紙を見たのです。彼女はぬっと現れたザンブリーニに驚かされたものの「あたしを雇って下さいな」、ザンブリーニはにやりとして「よし、住み込みで雇ってあげよう」話がとんとん拍子に進みます。そして住み込みの部屋に案内して貰ったリン、すぐ外に豚小屋があって豚がぶひぶひうるさいの(笑)。さらにリン、精神病院から脱走してきたばかりのリアルキチガイ。「パパ教えて何見てるの、小さな女の子が死にそうなのよ」という歌が頭の中で聞こえるという・・・。おまけに洗面所で剃刀を見つけるのでした。ああ、もう先の話が見えてきたなあ。

 ザンブリーニは町の嫌われ者。今日も今日とて近所に住んでいるメイシーさん(キャサリーン・ロス)が保安官のダン(ジェシー・ヴィント)を呼びつけて「あのザンブリーニの奴は豚に死体を食わせているのよ、人を殺してやっているんだわ。その豚が放し飼いになって家のまわりでぶひぶひ言うの、五月蝿くってもう耐えられない!奴を逮捕してよ」ダンは冷静に「んー、死体を豚にやっちゃいけないって法律はないっすからねえ」そういう問題じゃないっての(大笑い)。「死体には市民権がないっすからそれで逮捕なんかできないっすねえ」この保安官は何を言っておるのか。結局ダンは「まー、彼には豚を放し飼いにするなって言っておきますわ」これでメイシーさんの苦情はオシマイ。

 その後リンはナイフを持ったザンブリーニが寝室に忍び込み寝ているリンを滅多切りにするという悪夢を見たり、豚小屋を見に行こうとしたらザンブリーニに「うろちょろするんじゃねえ」と怒られたりいろいろあったのですが、まあ、ウェイトレスとしての仕事を無難にこなしております。

 しかし、リンは若くて綺麗、こんな女がウェイトレスをしていれば周りの男どもが放っておきません。いきなりモーションかけてきたのが石油掘りのベン。彼はリンに「ザンブリーニのところにゃいっつも若くて綺麗なウェイトレスが来るんだ。でもしばらくするとみんないなくなっちゃうの。豚に食わせているんだってみんな言っているぜ、悪いことは言わない、どっかよそで仕事を見つけたほうがいいよ。ところで今度、僕とデートしない?」

 またもダンに苦情を申し立てるメイシーさん。ため息をついたダンはカフェに行ってザンブリーニに「豚放し飼いにするのはやめてくれ」と要請します。そのついでに新しいウェイトレスと話がしたいと言い出します。台所に隠れてその話を聞いていたリンはぎくっ。おまけに「前に止めてある車も彼女のだろ」リン、ぎくぎくっ。早くも身元がばれるのかと思いきやザンブリーニ、「彼女は喘息で空気の良い田舎に来たんだ、体調悪くして寝てるよ」と言ってくれたのです。「じゃあ、仕方ないな」と退散する保安官。リンとザンブリーニ、なんだかんだ言いながら良いコンビじゃありませんか(笑)。

 ここで奇妙な行動にでるリン。彼女はどこやらに電話。そして「私はリンよ、パパを出して」、はて彼女のパパは彼女自身の手にかかって死んだ筈ですが。それなのにリンはあたかもパパと話しているように「パパ、リンよ、まだ、帰れない、分かって」などと話している。これは彼女の脳内電話ということなのでしょうか。

 さて、ここで事件が起こります。愛犬を運動させていたベンが偶然リンの捨てた看護婦の白衣を見つけたのです。「町には看護婦はいない、それに最近町にきたのはリンだけだ」彼はこの白衣をリンにつきつけて「これは君のものだろ、一体何をしにきたのだ」もちろん、ベンはそのヘンはどうでも良いんです。「黙っててやるから車でデートしようよ。夜の8時に迎えにくるよ」こっちの方が目的なので(笑)。車でデートするったってお星様見て綺麗だねえなんてことはない、ベン、車を止めるとおもむろに「ええやろ、させんかい!」助手席のリンに襲い掛かるのであります。

 危うしリン、あっさりヤラれちゃうのかと思いきや、ここで偶然保安官が通りかかった。パッとベンの車から抜け出したリン、保安官に「私カフェで働いているリンよ、送って下さらない」はい、ベン、ご馳走を保安官に掻っ攫われちゃった。保安官、「そうか、君がザンブリーニのところで働いている女性か、しかし、君は綺麗だねえ、お世辞じゃないよ」保安官までこんなこと言いやがる(笑)。

 さて、結局リンとヤレなかったベンですが、何しろ男の性、そんなことで諦めるタマではありません。その後もなおリンに「ねー、いいだろー、また出かけようよー」などと言っております。といつの間にかリンの寝室にいるベン、あれれ、リンが服を脱ぎだした。なんだと思っていたらリンが嫣然と微笑んで「昨日はごめんなさい、実は私もヤリたかったの」などと言い出すではありませんか。ああ、彼女のほうからベンを誘ったのだ。この未婚の若い女性らしからぬ言葉にすっかり興奮したベン、ぱっぱと服を脱ぎ捨ててベッドにもぐりこみます。「くー、たまりませんねー、うへへへへ」しかしその彼を待ち構えていたのはリンの剃刀攻撃でした。洗面所にあったあの剃刀でしゅびらば、ずばどす、ずびずば、リンはベンを滅多切り。「びわーっ」ベン、血まみれとなって絶命します。

 これを見つけたザンブリーニ、彼は錯乱状態となって「パパ、私、殺しちゃった、お願い、おしおきしないで」と呟いているリンを自分のベッドに寝かせます。そしてベンの死体を引きずって豚小屋へ行き、ばらばらにして豚に食わせてしまったのでありました。やっぱりリンとザンブリーニ、良いコンビです(笑)。

 次の朝、ザンブリーニのベッドで目を覚ましたリン、今だに混乱しております。外に出ると「助けて、助けて」という幻聴が。おまけに豚がぶひぶひ五月蝿い。そしてリン、またまたパパに電話。今度はパパが出てこなかったらしく「パパはどこ、ええっ、そんなのウソよ」今度はパパが死んだということを告げられたのですかねえ。やっぱりなんだか良く分からないです。電話が終わったとたん、ひときわ甲高く鳴く豚。たまらなくなったリン、悲鳴を上げて駆け出します。

 ここでようやく話題になるベンの失踪。ベンを捜索しているダンと助手のフランクに油田で働いている同僚の言うことがいい。「俺に金を借りてということならわかるけれども、俺、逆にあいつから金借りているんですぜ、奴が金を返してもらわないままどこかに行くなんてこと絶対ありませんやね」ベンの人となりを一言で表している優れたコメント(笑)。また例のメイシーさんも「ベンがいなくなった晩、豚どもが騒いでいたわよ、それに新しい豚が一匹増えている。あたし、ベンが豚に変えられたと思うのよ」んな、アホな(笑)。うんざりする保安官です。

 しかし放っておく訳にも行かず、とりあえずザンブリーニに話を聞くことになります。ザンブリーニは「そう言えばベンがあの娘を誘いにきたけど、体調が悪くて駄目だって断っていたな」とすっとぼけます。ところがその時豚小屋の方からワンワンという犬の鳴き声が!ベンの飼い犬が飼い主の臭いをかぎつけてやってきたのです。「なんだ、なんでベンの犬がこんなところに」ザンブリーニ、ぎくぎくぎくくっ。おまけにあっ、始末し切れなかった手首が落ちているぞ(大爆笑)。ザンブリーニ、その手首を靴で踏んで隠し「犬ですからなあ、所詮犬畜生のやることは理解できませんわ」結局手首には気がつかず帰っていく保安官です。どうも、この保安官、言っちゃ悪いけれどもちょっとニブイのではないか。

 そのくせ夜にカフェに来てリンに「ねえ、週末どっかに行かない」なんて誘ってやがる。この町の男どもはみーんなこんな奴らばっかりなのか。

 ザンブリーニは考えます。「あの犬はヤバイ」この思いを裏付けるかのようにやってきたベンの仕事仲間たち、豚小屋でザンブリーニに「てめえ、ベンをどうにかしただろう」「とっとと町から出て行け」と悪罵を浴びせついでに殴る蹴るの乱暴です。ズダボロになったザンブリーニ、とうとう犬をとっ捕まえて喉をさくりと切って捨てちゃったのであります。しかし、犬の死体はフランクによってあっさりと発見されザンブリーニに対する疑いをさらに深めることになったのでした。

 十分ややこしい状況になって参りましたが、ここでもう一人登場人物が。カマリロ州立病院から一人の男(ジム・アントニオ)がリンを探しにやってきたのです。彼はカフェにいるリンを首尾よく発見。「病院ではみんな、君のことを心配しているよ、君の帰りを待っているよ」と話しかけたのでした。リンは焦点の合わない目で「ええ、本当、みんな私のことを待ってくれているの。グレッグ先生は元気?」「うん、元気さ、だから良かったら病院へ戻らないか」リンはあっさりと頷いて「いいわ、じゃあ、荷物をまとめてくるからちょっと待ってて」

 この場面、公開当時、劇場の観客が一斉に「すんなり帰れる筈ねーだろ!」とツッコンだそうであります。

 ザンブリーニはいきなりリンが病院に戻ることになったと男、ジェス・ウィンターに言われて仰天します。「彼女はそのう、精神病院から脱走してきたのです。つまりクルクルパーなんですよ。えっ、父親、彼女に父親なんていませんよ」あわててリンに「病院に戻るって本当なのか」と問いただしますとリン、二ヤッと笑って「あなた、私にいて欲しい」「も、もちろんさ」この会話の後リンはナイフを持ってジェスの背後に忍び寄りぶすぶすぐさー。「びわーっ」ジェス絶命します。ザンブリーニは例によってこの死体を豚小屋に引きずっていって豚に食べさせるのでした。やっぱり良いコンビですよ、この二人。夫婦だってなかなかこうはいかない(笑)。

 ちなみにこの殺人劇の後ダンがカフェを訪れてリンに「気をつけろ、危ない奴がいる、犬まで殺しているぞ」と警告しております。言っちゃなんですが、やっぱり鈍いですよ、この保安官。

 あのザンブリーニに暴行した男達が再び「やっちまえ」と張り切っているところを保安官に止められるというあんまり意味のないシーンを挟みまして映画はいよいよクライマックス。保安官事務所にカマリロ州立病院からの問い合わせの電話が入ったのです。「ジェスという男をそちらにやったのですが、ご存知ないですか。リンと言う患者を連れ戻すためなのですが「ええっ!」あまりの驚きに椅子からどんがらがしゃんと転げ落ちるダン。さらに彼女が自分をレイプした父親を刺し殺したことを教えられたのです。

 真っ青になったダン、ザンブリーニに電話をかけて「大変だ、あの娘はクルクルパーだぞ、自分の父親を殺したのだ。今行くから十分に気をつけてくれ」保安官に知られてしまった!ザンブリーニはすぐにリンを呼んで「やばいぞ、保安官がくる、ほら手伝ってやるから荷物をまとめてここから逃げるんだ」しかし、リン、クルクルパーの本領をいよいよ発揮して「イヤよ、どうして逃げなくちゃならないの」あの例の歌が流れ始めます。リンは焦点の合わぬ目で周囲を見回して「パパはどこ、パパ、パパ」ザンブリーニは訳が分からず「パパはもういないんだ、死んだんだよ」「うそ、うそよ」はい、リン、ナイフでザンブリーニをぐさぐさのぐさー。「びわー」ザンブリーニ絶命します。

 リンはその死体の服を脱がせて鉈でばらばらに切断。そしておもむろに自分の服を脱ぐと死体を来るんで豚に投げ与えたのです。ぶひーぶひー、ぶっひっひー、豚はこのご馳走に大喜び、リンの服もろともがっつり頂いちゃったのでした。なるほど、これで自分の死を偽装した訳ですね。クルクルパーのくせに知恵が働くじゃないか、リン。

 そしてこの偽装にまんまと引っかかってしまう間抜けな保安官ダン(大笑い)。食われた死体をリンのものと思い込んで報告書に「娘の体のわずかな部分が回収されただけだった」なんて書いている。行方不明になっているザンブリーニを探そうともしないで「これにて一件落着」なんて呟いてる。どうもしょうがないものですな。

 ラストシーン、リンがフォルクスワーゲンを走らせております。そしてヒッチハイクの中年男を拾うと、「うふふ、あなた、私のパパそっくりね」と微笑むのでありました。エンドクレジット。

 最初っから最後まで豚は人肉を食うのみで一人も殺してはいません。それなのに『殺人豚』という邦題は酷いと思います。きっとメーカーの担当者がろくすっぽ内容を確かめもせず鼻でもほじりながらテキトーに考えたのでしょう。

 ワイド・カラー・モノラルのレンタルビデオ。画質はくすんで黒も浮きまくっていますが、まあ、こんなものでしょうな。

 エロの冒険者 

       HOMEPAGE http://homepage3.nifty.com/housei/

      SFシネクラシックス 輸入DVDでみるSF黄金時代(笑)

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