« 『H・G・ウェルズの月世界探検』(『First Men in the Moon』 1964年) | トップページ | 『肉の蝋人形』(『MYSTERY OF THE WAX MUSEUM』 1933年) »

2007年2月 8日 (木)

『未知への飛行』(『Fail-Safe』 1964年)

 

『未知への飛行』(『Fail-Safe』 1964年)

偶発的な事故のために米ソの核戦争今まさに勃発せんとす!この状況下でアメリカ大統領が選んだ核戦争抑止の方策はあまりに意外なものでありました。キューブリックの『博士の異常な愛情』と同じく単なる反核映画に留まらない傑作です。

ニューヨーク市午前530 悪夢を見ている男あり。ベッドで脂汗を流しつつ「ううーん、こら、メキシコや、闘牛やっとるで、あ、闘牛士にさされた、ひょっとしてわいが牛かぁ、わて、闘牛士に殺されてしもうてん、ああ」ぱっと飛び起きます。「あなた、夢みてたんですのん」と尋ねた奥さんに「ああ、いつもと同じや、一遍あの闘牛士の顔を見てみたいなあ、でもその時はわての最後かもしれへんなあ」訳の分からないことをいう夫に心配する奥さんですが、夫、ウォーレン将軍(ダン・オハーリィ)は「会議や、会議にいかなならん」

 彼は車で空港へ。そこからさらにセスナに乗り換えてペンタゴン(多分)へ向います。

 次に登場するのは政治学者のグロテシェル教授(ウォルター・マシュー)。彼はセレブのパーティで一晩中、これからの戦争がどうなるかについて討議をしていたのです。「核戦争になれば生き残るのは囚人と保険会社の文書係りだけでっせ。囚人は地下牢で、文書係りは保険会社の膨大な証書に守られて放射線から逃げ延びるのですわ。でもこれで生き残ってわぁ良かったワァとはなりません。そして核戦争後の地球でお互いの生存をかけて戦うのですわ」嫌な未来です(笑)。

 教授、パーティの後に車で女を送っていったのですが、女から秋波を送られるなり頬桁張り飛ばして「阿呆、人を見て誘わんかい、わてはその手の人種と違うで」おお、教授、なかなかハードボイルドですな。ヘンなことも喋るけど、決める時は決めるのです。もっともこの出来事、これからの展開にまったく関係ありませんけど。

 さて三番目の登場人物はミサイル基地指令のボーガン将軍(フランク・オーヴァートン)とカシオ大佐(フリッツ・ウィーバー)の凸凹コンビ。ボーガン将軍は「ああ、今日は基地反対派のラスコンブ議員(ソレル・ブック)を案内せなならんのや、一応、兵器メーカー社長のナップはん(ラッセル・コリンズ)も来てくれはるけど、わて、ラスコンブ議員とウマが合わんねん。コンブ、コンブってお前は羅臼かって言いたくなるねん、ああ、気が重いわあ」カシオ大佐は大佐でげろげろのアル中である両親の世話に追われているというなんともやりきれない境遇であります。

 そんな中、羅臼じゃなかったラスコンブ議員、ナップ社長を連れてのミサイル基地ツアーが開始。「わが国ではコンベアB-58ハスラーによって24時間の核パトロール体制をとっておりますねん。それらはすべてここでコントロールしてますのやで。また情報収集能力も凄いのですわ。偵察衛星で地球のどこでも見られます。人間の顔だって見分けられるくらいですわ」その説明どおり彼らの前の大スクリーンにいろいろな情報、映像が映し出されます。ソ連のミサイル基地の映像やアメリカの爆撃機群、さらにはソ連の潜水艦の位置までが一目瞭然。こら凄い(笑)。最後に砂浜で寝転がっているトップレスの金髪女性が映りまして男性陣にやにや・・・、こんな真面目な映画にそんなオチがついているわけねーだろ!!

 このシステムはナップ氏の会社で作られたもの。いい仕事をしておりますなー。しかしラスコンブ議員は浮かない顔です。「確かに凄いシステムや。しかし誰が全ての責任を負うのやろ、こんなん複雑すぎて責任の所在が分からへんわ!」

 ここでスクリーン上に未確認飛行物体。ボーガンやカシオは「はは、いつものことですわ。おおかた旅客機か鳥でしょ、そのうち確認されますわ」しかし取り決めに従って核パトロール中の爆撃機は進行制限地点(フェイルセイフ)へ進出します。ここで待機し、未確認飛行物体がミサイルであれば大統領の命令がフェイルセルフボックスを通じて下され爆撃機はソ連に突入。水爆をガン落とししてロスケどもを蒸発させるのです。逆に未確認飛行物体がボーガンやカシオのいった通り旅客機などであれば確認後に待機命令が解除、爆撃機は通常の核パトロールに戻ることになっているのです。

 さて、ウォーレン将軍の会議が始まりました。会議のお題は「核戦争で限定戦は可能やろか」グロテシェル教授も参加しておりましてさっそく演説開始。「まあ、結論から言いますと核使って限定戦やるというのは無理やちゅうことです。一発核落とされたら軍事施設も民間施設もへったくれもありまへん。軍事施設やられたからこっちも軍事施設をやったろやないけなどと考えるロスケはおりませんからな」「すると」ここで参加者の一人が手を上げて発言します。「ちゅうことはですな、もしこっちが失敗やらかして戦争する気もないのに間違えて水爆落としちゃったら、もうロスケは聞く耳持たずで全面核戦争になりまんのか」

 その失敗したらどうなるかという予想があっという間に現実のものになるという・・・。

 例の未確認飛行物体は強風でコースを外れた旅客機だということが判明し、全爆撃機隊に待機の解除が命令されます。しかしなんとしたことでしょう、機械の故障によりこの命令がある爆撃機編隊に届かずそれどころか事実上の攻撃命令であるコードCAP811が発令されたのでした。この通信を受けた爆撃機の乗員、グレイディ・トーマス、サリバンは機密命令書を取り出して確認しようとします。「わあ、コードCAP811で間違あらへん」「えらいこっちゃ、機密命令書にはなんと書いてある」「ひぃ、モ、モスクワですわ、わてら、これからモスクワに水爆落としにいかなならん」

 こうして爆撃機第6編隊はモスクワへの進路を取ったのです。

 ボーガン、カシオは大慌て。ペンタゴンのウォーレン将軍や大統領を交えて相談します。大統領が直接通信しても普段から爆撃機の乗員には「大統領の声が物まねされているかも知れないと思え」と教育してあるので駄目(笑)。戦闘機の誘導も「アメリカの戦闘機を見たらそれはソ連の偽装であると思え」と教育してあるのでやっぱり駄目(笑)。「戦闘機で撃墜したれ」という結論に至ります。

 この命令を受けたF-102デルタダガーの編隊が燃料切れの危険があるにも関わらずアフタバーナーを点火して加速、第6編隊を追跡にかかるのでした。ちなみにアフタバーナー点火の場面、ロケット弾発射シーンで誤魔化しております。爆撃機編隊を目視で確認、直ちにミサイル攻撃に移る4機のデルタダガーでしたが「あかん、ミサイル、当たらん」おまけに「ひい、燃料切れや、落ちるねんて、落ちるねんて」はい、あわれデルタダガー編隊は全滅してしまったのであります。

 教授は大統領から意見を求められて「ソ連は反撃せんでしょ、ソ連の目的は共産革命で世界をアカにすることや、加山雄三の『大学の若大将』が『大学のアカ大将』になるような世界にすることや。その総本山のソ連がやられたらもともこもない。ソ連は共産主義のために降伏しまっせ」なんだかさっきの限定戦の時といっていることが違わないか(笑)。

 大統領はついにクレムリンのソ連書記長とホットラインを接続し、直接話し合うことにします。「書記長閣下、えらいこっちゃ、うっとことの爆撃機が事故で間違った命令受けてしもたんです。今爆撃機がモスクワに向って飛んでおりますわ。水爆積んでますんで落としたらモスクワ、じゅっと蒸発してしまいますがな。でも、忘れんといて下さいや、これは事故でっせ、わてらおたくと核戦争しようなんていう気はさらさらありませんさかいに」こんなの信じられる訳がありません。「あなた、人を馬鹿にしているのですか」むっとするソ連書記長です(笑)。大統領は慌てて「ホ、ホンマですわ、事故、間違いなんですわ、その証拠にわてら戦闘機で爆撃機撃墜しようとしてましたのや、失敗したけど」「本当か」と未だに疑わしげなソ連書記長です。

爆撃機の編隊はついにソ連領空内に突入します。大統領は悲痛な声で「書記長閣下、少なくとも一機の爆撃機がモスクワに到達しますわ。危険です、逃げてくんなはれや」この編隊を迎撃するソ連戦闘機群。爆撃機隊は電子的な囮を放出、相手のレーダーを霍乱します。さらに空対空ミサイルを発射、逆に一機の戦闘機を撃墜するのでした。この戦果?にワァっと喜ぶ司令部要員。「やったー、ロスケをぶち殺したで!」そんな彼らをどなりつけるボーガン将軍です。「アホ、何いってんねん、喜ぶ奴がおるかいや」しゅんとなる司令部要員たち。この後逆にアメリカの爆撃機が一機撃墜されます。これで残りは5機となりました。

 大統領は再び書記長にホットラインを繋いで「うっとこの針路盤がぱっと光って故障しましたんや。そのせいで攻撃開始の合図が送られたんだす。おたく、うちらに電波妨害かけはりましたでしょ?」最初は側近どもにわあわあ言われたせいでなかなか答えようとしなかった書記長ですが、ついに決意したと見えて「はい、私たちは電波妨害しておりました」大統領意気込んで「それや、それが事故の証拠や。だから反撃したらあきまへんで!電波妨害やめてくんなはれ、そしたらわてが直接指揮官に話しますわ」

 爆撃機編隊指揮官グレイディに直接無線連絡する大統領です。「命令は誤りや、モスクワに水爆落としたらアカン、すぐ戻ってくるのやで」しかし前にも言ったようにこの爆撃機の乗員は口頭での任務変更を拒否するよう教育されています。グレイディは「あんた、本当に大統領かや、ロスケの物まね芸人が大統領の物まねしとるのやろ!」あー、通信切ってしまいやがった!いや、本当に大統領の物まねだと考える奴がいるとは思いませんでした(笑)。がっくりする大統領。しかしいつまでも落ち込んではいられません。彼は「ええい、グレイディの奥さん、連れてこんかい!」奥さんと話させればこの通信がホンモノだと思うだろうと考えたのですが、果たして上手くいくかどうか。

 この間にも続いている爆撃機対迎撃戦闘機の対空戦。爆撃機がもう一機撃墜されてこれで残りは4機となりました。

 大統領は冒頭で悪夢を見ていた人、ウォーレン・ブラック将軍を呼び出していや、なんですな、ブラック将軍ってゲルショッカーかって思いますけどね(笑)。大統領は彼に「アンドリュース基地でわての命令を待たんかい」と指示します。それからソ連書記長、ソ連のアメリカ大使館、アメリカのソ連大使館、ソ連国連代表、を結ぶ連絡網を作り「全アメリカ軍に告ぐ。ええか、ソ連空軍に全面協力して爆撃機を全機撃墜するのや」と大号令。ボーガン将軍はさっそく本来なら重大な軍事機密であるアメリカ爆撃機の対空ミサイルの撃墜方法を伝えるのです。「大出力の電波をあててやればオーバーロードして吹き飛びますわ。電子レンジでものが煮えるのと同じだす」その指示に従って電波を発信するソ連軍。次々に対空ミサイルが爆発します。さらに一機の爆撃機が抱いていたミサイルまで爆発、墜落したのでした。これで残り3機。

 ボーガン将軍は喜びますが部下たちは納得がいきません。何しろ昨日まで滅ぼすべき敵であるソ連に協力して自軍の爆撃機を撃墜したのです。その中でも特に頭に来たのがカシオ大佐。「将軍、こんなことやっとられませんわ、先制攻撃をしかけましょ、ソ連を全部吹き飛ばせば何も関係なくなりまっせ」ボーガン将軍は相手にせず今度はソ連側に低空に降下して逃げようとした爆撃機の位置を教えようとします。これでついにカシオ大佐が切れた!「きいいいい」彼は電話の受話器を毟り取るとこれで将軍の頭をぼかーっ(大笑い)。昏倒した将軍を尻目に「よーし、今からわてが指揮を執る。ロスケをやったらんかい」と叫ぶのですが、無論逮捕されてしまいましたとさ。頭をさすりながら起き上がったボーガン将軍、「ほー、いてて、えらい目におうたわ」

 ボーガン将軍改めてソ連側に爆撃機の位置を連絡。ただちに迎撃に向った戦闘機に一機撃墜されて残りは2機となりました。

 大統領はついに決意をします。「書記長閣下 モスクワに水爆が落ちたらわてらもおんなじことをやります。ニューヨークに水爆落とします。これでアイコや、だから反撃はせんといてくんなはれ、核戦争だけはやめてくんなはれ」続いて部下にこのままソ連との電話回線接続を継続させるように命令します。「水爆が落ちたら電話がキーンとなりよるわ、電話線が水爆の高熱で溶かされる音じゃ」つまりそのキーンという音が水爆が落ちたという知らせになる訳です。

 いまや残り2機となった爆撃機編隊。最後の迎撃戦闘機隊を迎え撃ちます。爆撃機のうち一機は水爆を積んでいない囮機。これが戦闘機隊をひきつけてまんまと本命のグレイディ機を通り抜けさせてしまったのです。ここでようやく現れたグレイディ夫人、無線で「あんた、命令は間違いやったんや、戦争やらやってへん、だからだから帰ってきてー」この悲痛な叫びも効果なし。「また物まね芸人かい、今度は女やから清水ミチコやろか」グレイディ、こう呟いてああ、また無線きりよった。

 その爆撃機に対して最後のミサイル攻撃が敢行されます。しかし息を呑んで待つ大統領に届いた知らせは「大統領、やつはミサイルをフレア代わりにして突破しようりました。もうあきまへん!」ここででてきたのがあのグロテシェル教授、「この水爆で死ぬ人間を勘定してみました。まあ、即死300万、放射線障害で5週間以内にさらに200万、アハハ、これはひどい」酷いのはお前だっての(笑)。大統領はホットラインでソ連書記長と最後の会話を交します。「わてら、機械に頼りすぎましたわ」「こんなことを二度と起こしてはならん」「おっしゃるとおりですわ、反省しとりま」「両陣営の壁を壊さなければ・・・」

 水爆どかーん。同時に電話線からキーンという音がします。モスクワは水爆によって壊滅したのです。

 大統領は待機していたブラック将軍に「ニューヨークへ水爆落とさんかい」と命令したのでした。コンベアB-58爆撃機で発進するブラック将軍。水爆投下地点であるエンパイアステートビル上空に到達します。そして秒読みの開始、「10・・・9・・・8・・・7・・・」ブラック将軍の耳には再びあの闘技場の喧騒が聞こえてきました。彼は呟きます。「ベティ、あの夢の続きが分かった。闘牛士はわてやったのや」水爆投下どかーん。エンドクレジット。

かなり地味な映画で特撮場面も最低限、ほぼ基地内で話が進行しおり出てくるのもむさくるしい男ばっかり(笑)。この派手さのまったくない映画で終わりまで飽きさせず緊張感を持続させるシドニー・ルメットの演出はさすがとしか言いようがありません。

モノクロ・ワイド、WOWOWハイビジョン放送、モノラル音声。コントラストがとにかく明快で目が痛くなるような高画質。黒もきっちり沈んでいてモノクロ画像というものの美しさを再認識させられます。

 エロの冒険者 

       HOMEPAGE http://homepage3.nifty.com/housei/

      SFシネクラシックス 輸入DVDでみるSF黄金時代(笑)

|

« 『H・G・ウェルズの月世界探検』(『First Men in the Moon』 1964年) | トップページ | 『肉の蝋人形』(『MYSTERY OF THE WAX MUSEUM』 1933年) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 『未知への飛行』(『Fail-Safe』 1964年):

« 『H・G・ウェルズの月世界探検』(『First Men in the Moon』 1964年) | トップページ | 『肉の蝋人形』(『MYSTERY OF THE WAX MUSEUM』 1933年) »