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2007年2月 8日 (木)

『肉の蝋人形』(『House of Wax 』 1953年)

 

『肉の蝋人形』(『House of Wax 』 1953年)

 『肉の蝋人形』1933年版のリメイクであります。こちらで主役を務めるのはヴィンセント・プライス、オリジナルのライオネル・アトウィルも悪くはないのですが、やっぱりヴィンセント・プライスには敵いませんや。

時は1900年、ところはニューヨーク、雨でけぶる夜であります。ここはヘンリー・ジャロッド教授(ヴィンセント・プライス)の経営する蝋人形館。しかし至上の美を追求する教授は他のは流行っている蝋人形館のようにエロ・グロ路線でいくことを拒否しております。そのせいで客足はもう一つ、今日も今日とて「客、200人しか来ていないじゃないか」と共同経営者のマシュー・バークス(ロイ・ロバーツ)に責められております。「僕ね、この蝋人形館に2万ドルも投資しているんだよ。それがちっとも返ってこないじゃないか」「いいや、ちょっと待ちなさい」かりかりしているマシューに比してジャロッド教授は落ち着いたもの。「今日、友達が美術評論家のウォーレスさん(ポール・カヴァナ)を連れてきてくれるんだ。彼は私の芸術を理解してくれる。きっと高値で買ってくれるぞ」

 はい、その言葉通り教授の友達とウォーレスがやってきます。紹介もそこそこに飾られた蝋人形たち、クレオパトラとアンソニー、リンカーンと暗殺犯のブース、ジャンヌ・ダルク、そしてマリー・アントワネットを見て回るウォーレス。「これは凄い、たまらん、なんと、髪の毛はホンモノを使っておられるのか、何、蝋が熱いうちに一本一本手で植え込んだ、ああ、なんと手の掛かることをするのですか」大絶賛です。途中でジャロッド教授が「ジャンヌ・ダルクやマリー・アントワネットはまだその出来上がりに満足していません。適当なモデルがいないからです。でも私はいつかきっとモデルを見つけて人形を完成させて見せます」といささかアブナイことを言うのですが(笑)そんなことも気にとめません。「よし、三ヵ月後、私がエジプトから帰ってから買取価格について相談しよう、それでいいですね」友達とウォーレス、帰っていきます。

 ジャロッド教授はウォーレスの言葉に大喜びなのですが、マシューはしかめっつら。「三ヶ月後だって!そんなに待ってられないって、俺は今すぐ金が欲しいの」ということでオリジナルの『肉の蝋人形 1933年版』(『Mystery of the Wax Museum』)と同じく「蝋人形館に火をつけて火災保険を山分けにしよう!」当然ながらジャロッドがうんという筈もなし。「私の人形たちを燃やすって、そんなことはやめてくれ」はい、取っ組み合いになります。マシューはむしゃぶりついてくるジャロッドをげしと蹴り飛ばして失神させると「油ディ、油ダ」と歌いながら蝋人形にマッチで点火しまくり。あ、念の為言っておきますけど「油ディ、油ダ」というのは「オブラディ・オブラダ」の駄洒落ですからね。さらにガスの元栓も全開放、開店日のパチンコ屋だってこんなに開放しないっての。そうして失神したままのジャロッドを放って逃げてしまうのです。

 なんとか意識を取り戻したジャロッド、水で火を消そうとしますが、とても無理。彼は全身にやけどを負いながらなんとか脱出します。直後、ガスに引火して大爆発。蝋人形館はジャロッドの夢とともに粉々に砕け散ったのでありました。

 さて、この火事の後、マシューは保険金満額貰ってほくほく顔。こんな中年のオヤヂが小金を持ったら何をするかというとそれは決まっています。女です(笑)。マシュー、キャシー・グレイ(キャロライン・ジョーンズ)という女を必死にくどいております。「アトランティックシティでも行くか。ギャンブルで楽しんでその後はホテルでしっぽりと、ウヒヒヒヒ。何、ナイアガラがいい、じゃあ、昼間はナイアガラの滝でしっぽり濡れて夜は夜で別のところをしっぽりさせて」どうもいやらしくていけませんな、こんなオヤヂ。

 自宅のアパートメントに戻ったマシュー。金庫からしっぽり資金(笑)を取り出そうとします。しかしその背後に現れた怪人物あり。顔が醜く焼けただれたその怪人物はロープを持ってマシューに襲い掛かったのでした。首をぎゅうぎゅう締め付けてマシューを絞殺。それから首にロープを巻きつけてエレベーターシャフトに投げ落とし首吊り自殺を偽装したのでありました。この怪人物の正体やいかにってもう1933年版と違って大バレなんですけど。

 マシューの死で旅行がおじゃんになったキャシー。でも別に落ち込む訳でもなくってもう次の男を見つけています。彼女は同じ下宿屋の友人、スー(フィリス・カーク)にコルセットを締めて貰いながら「すっごくハンサムな人なのよ、マシューには悪いけれども今度の人のほうが百倍もいいわ」スーは彼女ののろけを聞きながらぎゅうぎゅうコルセットを締めています。うわあ、キャシーのウェストがめちゃくちゃ細くなって見ているだけで息苦しくなりそうです(笑)。「手伝ってくれてありがとう」キャシーはそう言ってデートに出かけていくのでした。

 でもスーは貧乏です。仕事にあぶれてゴハンもまともに食べられないほど。もちろん、下宿代は未払いです。その夜遅く帰ってきたスーは大家さんに捕まって「家賃を払いなさい、すぐ払いなさい、今払いなさい、なかったらキャシーがデートから帰ってきているから彼女からお金を借りなさい!」仕方なくキャシーの部屋を訪ねるスー。しかし、その時すでにキャシーはベッドの上で死体になっていたのでした。彼女は何者かによって絞殺されたのです。その何者かというのはもちろんマシューをやっつけた火傷の怪人物。

 スーはこの怪人物に追われて夜霧の町を逃げ惑うことになるのです。逃げ惑う若く美しい(そして貧乏)女と体に障害があるらしく奇妙な走り方をする怪人物のコントラストが大変魅惑的な名場面。いつまで続くかと思われたこの逃走劇でしたがスーがなんとか知り合いのアンドリュース夫人(アンジェラ・クラーク)の家に逃げ込んだことでようやく終止符がうたれます。アンドリュース夫人と息子のスコット(ポール・ピセリーニ)は「キャシーが殺されて犯人に追いかけられたの」と泣き喚く彼女をかくまうことになったのでした。

 さて、キャシーの死体はモルグへ運ばれます。二人の係員が死体を乗せたストレッチャーを押しているといきなり死体の上半身がぐいんと跳ね上がる。二人は少しも慌てることなく「芳香剤塗っていると縮んであんなふうになるんだ」これは防腐剤が芳香剤に変わっただけで1933年版と同じギャグですね。モルグの死体の中に紛れていたのはもちろん、あの怪人物。係員が出て行った後やおら起き上がった怪人物は外の仲間と協力してキャシーの死体を盗み出すのです。

 翌日アンドリュース親子に付き添われてニューヨーク市警へ出頭したスー、刑事さんからキャシーの死体が消えたことを聞かされます。「マシューやパターソン判事の時と同じだ、どうして死体なんかを盗むのだ」スーは犯人の唯一の目撃者として警察の監視下に入ることになるのです。

 場面は変わって、なつかしい人物がお目見えします。美術評論家のウォーレスです。彼は死んだ筈のジャロッドから手紙を貰って驚いて飛んできたのです。手紙に書いてあった住所に行ってみるとなるほど工房らしきものがある。そしてそこで働いていたのがジャロッドの助手、おしのイゴール(チャールス・ブチンスキー=のちのチャールズ・ブロンソン)でありました。彼に案内されて工房の中に入ってみるとおお、確かにジャロッド教授です。火事のせいで酷い火傷を追ったらしく手はひきつり、歩けなくなって車椅子生活になってはいましたが、彼は間違いなく生きていたのです。再会を喜ぶウォーレスとジャロッド。続いてジャロッドは地下の作業場へウォーレスを案内します。そこで得意げに披露したのが彼自身が考案して作成した蝋人形作成装置であります。煮えたぎった蝋の釜からハンドルを回すだけで蝋がシャワーへ導かれます。そしてその下に置かれた型に注がれあっという間に人形が完成というしくみ。

 ジャロッドはこの装置と二人の弟子を使って蝋人形を作り再び蝋人形館をオープンしようとしていたのでした。「私はほれ、両手がこの通りですから」と火傷だらけの手を見せて悲しげに微笑みながら「この装置と二人の弟子がいれば大丈夫です。特にマリー・アントワネットとジャンヌ・ダルクはモデルを見つけてきっと完成させますよ。つきましてはウォーレス先生に3万ドルほど用立てて欲しいのです」なるほど、投資を願うために呼び出したということですね。「何、今度は私もエロ・グロでやりますから、お客が入りますぜえ」ウォーレスは至上の美を追求した孤高の芸術家がこんなことを言い出したのを悲しみつつ、投資を承諾したのです。ここでジャロッドが棺桶様の木の箱をぱっと開けると中にあったのがマシューの首吊り死体を模した蝋人形。ご丁寧に首に索条痕がついているという(笑)。ひるむウォーレスに「これは、私の前のパートナーです。可哀想に自殺をしましてな、こういうセンセーショナルな蝋人形を飾ればもう人気間違いなしですよ」

 インターミッションを挟みましていよいよ新蝋人形館がオープンします。

 蝋人形館の前で呼び込みをやっている芸人あり、「よってらっしゃい、見てらっしゃい、エログロの饗宴、ジャロッド教授の蝋人形館だよ!」この人がやっている芸というのが、なんといいますか、ラケットを両手に持ってゴムひものついた玉をぱんぱんぱんぱん打つという奴。この『肉の蝋人形』は元は3D映画ですから、こっちに向ってぱんぱんぱんぱん打ってくる。公開当時、この玉がスクリーンから飛び出してくるように見えたのでしょうなあ。

 さて、蝋人形館ではジャロッド教授が得意満面で人形たちについて解説しております。お馴染みのクレオパトラとアンソニー、リンカーンと暗殺犯のブース、ジャンヌ・ダルク、そのできばえの素晴らしさに息を呑む観衆です。そしてその後に紹介されたのがこの蝋人形館の新たな目玉、「どっちの猟奇ショー」、現実に起こった奇怪な犯罪事件の現場を再現しようという誠にもって悪趣味な企画であります。奥さんを殺した現代の青ひげ、1890年に人類初の電気椅子処刑囚となったケムラー、こんないやなラインナップに観衆の一人、うら若い女性がひーっと失神してしまうのでありました。そして、最後にエレベーターシャフトで首吊り自殺したマシューの死体。わあ、エレベーターシャフトのセットまで作っているぞ(大笑い)。ジャロッド教授はにやにやしながら「これからも精力的に猟奇事件現場を再現していきます。皆様、事件が起こったらこの蝋人形館においでなさい」

 さて、実は彫刻家であったスコット、スーを連れて蝋人形館を見物にやってきます。そこで旧知のウォーレスに出会ったスコット、ジャロッド教授に紹介されるのでした。スコットはこの止せばいいのにこの蝋人形館で雇って下さいと頼み教授は快諾します。しかしどうやら教授の目はスーに向いているよう。スコットを雇うことにしたのもなにやら企みがあってのことに違いありません。さて、この時スーはジャンヌ・ダルクの蝋人形に目を止めます。この人形があまりにもキャシーに似ていたからです。ジャロッド教授に聞いてみたところ、「あー、それはキャシーの写真を見ましてな、あまりに気に入ったので弟子にそっくりに作らせたのです」

 ジャロッド教授はこの後スーをねっとりとした目つきで見つめて、「私の最高傑作はマリー・アントワネットだった。あなたは彼女にそっくりだ。またいつでもおいでなさい」

 蝋人形館を辞すスコットとスーです。ここでまたさっきの呼び込み芸人が玉をぱんぱんぱんぱん、こっちに向けてぱんぱんぱんぱん、いくら立体映画だからと言ってしつこすぎるっての(笑)。

 その夜スーの寝室に忍び込んできたのはあの火傷の怪人物、ベッドに寝ているスー、大ピーンチとなるのですが、彼女の悲鳴にひるんだ怪人物は逃げ出してしまうのです。駆けつけてきたスコットとアンドリュース夫人に「キャシーを殺した犯人だわ、私も狙われているのよ」と泣き喚く一幕。

 翌日、スコットとスーはそのままフレンチカンカンバーみたいなところに行ってフレンチカンカンの鑑賞。ダンサーがこっちに向けて足を上げたりスカート捲り上げて尻を突き出したり、いやもう立体映画とは言え大変なことですよ。ほら、ごらんなさい、スーも「あれじゃ見せすぎよ」と顔を赤らめているではありませんか(笑)。ここでスコットにキャシーの件を話すスー。「教授は写真を見て作らせたと言ってたけどあのジャンヌ・ダルクはイヤリングとピアスしていたのよ、そんなジャンヌ・ダルクいないわよ。あれはキャシーの死体をそのまま使っているのだわ」死体云々はともかくとしてイヤリング・ピアスはもっともな話(笑)。スコットとスーは警察署に行ってブレナン警部(フランク・ラブジョイ)と面会。彼女の疑惑を調べてくれるよう頼んだのでした。ブレナン警部はもちろん信じませんでしたが、とにかく他の手がかりもないことだし教授を調べることになります。

 部下のシェーン刑事と蝋人形館に赴く警部。彼らはリンカーン暗殺犯ブースの人形が行方不明になっているパターソン判事にそっくりなことに気がつきます。さらに「旦那方、人形に触らないでくだせぇ」と注意しに来たレオンを見てシェーン、「警部、あいつ見たことがありますよ、そうだ、あいつはヘンドリックスだ。刑務所を出てから犯罪起こしたもので指名手配されている奴だ、そうか、こんなところに隠れてやがったのか」

 あっさりと警察に連行されたレオン。その所持品の中から判事の金時計がでてくるのは1933年版と同じ。「どうしたんだ」と詰問されたレオン、もごもごと「それは拾ったんでがす」というのですがもちろん信用されるはずもなし。「このまま泊まって頂きましょう」と言われて留置されてしまいましたとさ。

 さて、翌日はスーの誕生日。スコットは彼女との誕生日デートを約束しております。プレゼントを渡してムードのいいバーで酔わしてあわよくばウヒヒヒなんて思っているところにジャロッド教授から「造花の注文に行ってくれ」とお使い頼まれちゃった。そして彼が出かけている間にスーがやってきて、蝋人形館の中でえんえん彼を探してさまようという流れになる訳です。そしてもう一度ジャンヌダルクの人形を調べてみたら、あっ、黒髪の鬘が落ちて下から金髪が現れた。やっぱりこれはキャシーの死体なのだ!「まったく余計なことをしてくれましたな」背後から聞こえた教授の声にびっくりして振り向くスーです。ひーっと逃げ出しますとジャロッド教授は何のためらいもなく車椅子から立ち上がって彼女を追いかけます。スーは「クララですか!」とツッコミつつ逃げたのですがイゴールに行く手を遮られついに教授に捕まってしまったのでした。

 、「おお、わたしのマリー・アントワネットよ。その美貌を永遠の存在にしてやろう。蝋人形になれば永遠にその姿のままでいられるのだよ」こんなこと言われたスー、ついに切れます。「てめえ、オヤヂ、気味の悪いことを言ってんじゃねーよ」高校生の頃、生家のブロンクスあたりで「鬼姫のスー」と恐れられた彼女の地が出て参りましてひるむ教授の顔面にぼかっ、スーパンチが炸裂します。するとうわあ、教授の顔がばりばりばりんと砕けてしまったではありませんか。中から現れたのは酷い火傷で醜く引き歪んだ彼の本当の顔でした。こんなもの見せられたらいかに「鬼姫のスー」といえどもたまりません。あまりの恐ろしさにへなへなと崩れ折れてしまいます。教授はその彼女を抱え上げると地下室へ。例の蝋のシャワー装置の下に寝かせて「さあ、マリー・アントワネットを蘇らせるぞ!」

 このへんは1933年版とまったく同じですね。

 さて、留置されて厳しい取調べを受けているレオン。彼はアル中です。アル中ですから酒を飲まずにはいられません。取調べの刑事がウィスキーを取り出してコップにとくとく。きゅっと飲むのを見せびらかしますと、はい、あっさりレオン陥落します。「旦那、白状します、あの蝋人形館の人形はみんな死体でがす。判事はブースに似ていたから教授が殺したんでがす。教授は次にスーを狙っているでがす!」これは大変、直ちに出動する警官隊です。

 ここでようやく蝋人形館に戻ってきたスコット。ジャンヌダルクの鬘を見つけて「なんじゃ、こりゃ」さらに地下からスーの悲鳴が聞こえてきた。「スー、今助けにいくぞ」と勇ましく飛び出したのですがその前に立ちふさがったのがイゴール。彼とイゴールは取っ組み合いになります。しかしイゴール、さすがはのちのチャールズ・ブロンソンだけあって強い、強い。ついに殴られて失神してしまったのです。イゴールはその彼をギロチン台にセットして首を跳ねようとしたのですが、ついに警官隊が到着した。イゴールは捕らえられスコットは危ういところで助けられるのです。

 この後警官隊は地下室へ突入。彼らを迎え撃った教授がまた必要以上に強くて警官4人を叩きのめしてしまいます。しかし衆寡敵せず殴られた教授、蝋のプールの中に落っこちてしまうのでした。警部がスーを助け出して、めでたし、めでたし。これにて恐怖の蝋人形館のお話はおしまいです。

 カラー・ワイド、モノラル音声。カラー画面はとにかく綺麗。こんな高画質で『肉の蝋人形』1953年版が楽しめるとはまったくいい時代になったものです。モノラル音声も高品位。非常に聞きやすいです。

     ワーナー・ホーム・ビデオの国内盤DVD。

エロの冒険者 

       HOMEPAGE http://homepage3.nifty.com/housei/

      SFシネクラシックス 輸入DVDでみるSF黄金時代(笑)

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