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2007年7月27日 (金)

『海獣ビヒモス』(『The Giant Behemoth』 1959年)

 

肝心の海獣ビヒモスのモーションアニメが今ひとつという悪評ばかり聞く映画ですが、実際に見てみたらこれが面白いのなんの。核実験の影響で体中に放射能を蓄えしかもそれを放射して敵をやっつけるという身も蓋もないゴジラのパクリが素敵です(笑)。

 警告、警告、このDVDのリージョンは1です。したがって日本国内のDVDプレーヤーでは再生できません。警告、警告。

荒れ狂う海をバックにオープニングタイトル。これが終わりますといきなり核実験。御馴染みのきのこ雲が皆さんのご機嫌を伺いに参ります。この核実験は実はフィルムで、これを使って「放射能は恐ろしいぞ」と学会で発表しているのが本作の主人公スティーブ・カーネス教授(ジーン・エヴァンス)であります。「良いか、皆さん、我々はその発見以来143回もの核実験をしてきた。放射性廃棄物も海に捨てている。今のところ影響はでてないかのように思われるが安心してはなりません。プランクトンは海水から放射能を取り込み2,000倍ため込む、そのプランクトンを食べる魚は4,000倍、その魚を食べる鳥は実に五万倍もの放射能をため込むのです。このアトミック食物連鎖は地球に重大な影響を与えるかも知れません。何かが海から出現し、我々に逆襲するかも知れないのです」

 舞台はぱっとコーンウォールのルー村へ。村民の大半が漁業で暮らしを立てている静かな村であります。ここで漁から戻ってきた親子。父親のトム、娘のジャニー(レイヒ・マディソン)、ジャニーは獲物を整理して村へ売りにいくというトムを残して夕食の準備のために先に家へ戻ったのでした。トム、一心不乱に働いておりますと、なにやら海の方から物音が。ん、なんだと顔を上げたトム、何者かを目撃して「ウワァー」そして白い光を浴びてばったり倒れてしまったのです。

 夕食の準備を終えたジャニー、父親がまさかそんな目に会っているとは露知らず、「パパったら魚を売って小金ができたものだから、また飲んだくれているのね」酒場へ行くのですが、パパはいません。心配になった彼女はボーイフレンドのジョン(ジョン・タマー)に頼んで一緒に探して貰うことになります。そして砂浜へ行きますと、はい、顔面ケロイドだらけのトムを見つけたのです。「きゃー、パパが顔面火ぶくれに」と叫んで彼を抱き起こすジャニー。瀕死のトムは「海からビヒモスが、炎が・・・」と意味不明なことを呟いてがくっ。絶命したのであります。

 変事はこれだけではありませんでした。数日後行われたトムの葬式の後、海岸へ行ったジャニーとジョンが見たものは海岸に打ち上げられた無数の魚だったのです。ジョンはここで魚に混じって打ち上げられていた白いクラゲのようなものを見つけます。好奇心を覚えたジョンがこれに触ってみますと「ギャーッ!」トムの時と同じく腕に火傷を負ってしまったのであります。

 さて、ロンドンのカーネス、ホテルで次のようなニュースを耳にします。「コーンウォールのルー村の海岸で無数の魚が打ち上げられたそうです。なんでも海で怪物を目撃したという話もあって、ははは、田舎の人はいろいろ考えますな」ニュースキャスターは冗談半分にニュースを伝えたのですが、これにピンと来たカーネス、原子力エネルギー委員会の長、ビックフォード教授(アンドレ・モレル)を尋ねます。すると果たしてビックフォード教授もこのニュースには注目しておりまして、「いや、報道されてないけど、人が一人死んでいるんだよ、酷い火傷で」カーネス、ますますピンと来て「それ、ヒロシマと同じじゃないっすかね」

 二人は直接ルー村へ赴き調査することになります。

 二人は漁に出ることもできずくすぶっていた漁師たちにインタビュー。「おらあ、海で光るものみただよ、海底のほうからぴかーっとしていただ」という証言を聞きだします。次にジョンに案内されて村のお医者さん、モリス先生のところへ。死んだトムのことを聞きにいったのであります。もっともモリス先生はトムの火傷を放射能によるものとは考えておらず、「クラゲか海草の毒じゃないの、それとアレルギー反応が重なってあんな風になったんじゃないですか」と暢気なことを言っております。彼はついでにジョンの腕を手当て。このむごたらしい火傷をみたカーネスは思わず「おぇーっ、キモチワルー」、じゃなくって(笑)「これはやっぱり放射線によるものだ」と自らの確信をますます深めたのであります。

 カーネスとビックフォードはトムが見つかった砂浜でガイガーカウンターを使って調査。しかし何の反応もありません。ジョンからあのクラゲ状の物体があった場所を聞き出してガイガーカウンターを当ててみたのですがやっぱり反応なし。それでも原因は放射能以外に考えられないということで、砂、海水、付近の岩場にはえているコケ、ルー村で獲れた魚などを大量にロンドンの研究所へ運び込み徹底的なテストを行うことになります。そしてついに近くの海で獲れたカレイから放射能の反応が。そのカレイは体内に多量の放射能を取り込んでおり、部屋を暗くすると光るのです(笑)。ビックフォードは直ちに政府に連絡。ルー村付近で獲れた魚の出荷を禁止させるのでした。

 一方カーネスは漁船をチャーターして海の探索。暗い海、沿岸警備隊からは「蒸気船ヴァルキリー号が消息を絶ちました。目撃した人は直ちに連絡を下さい」なんて連絡が入ってムード満点。といきなりカーネスが持ち込んでいたガイガーカウンターが激しい反応を示します。「ん、なんだ、なんだ」前方の海上を双眼鏡で見てみたら、おお、巨大な生き物の首が海中に没するところではありませんか。「わあ、あれだ、あれが怪物だ、ビヒモスだ」船の船長はきょとんとしております。「ビヒモスってあの体に良い乳酸菌ですか」「それはビフィズス、下らないボケかましてないでとっとと追いかけて下さい」最高スピードで怪物を追いかける漁船。しかしあえなく振り切られてしまったのであります。

 休む間もなく起こる次の事件。行方不明になっていたヴァルキリー号が海岸に難破しているのが見つかったのです。調査のために呼ばれたカーネス、めちゃくちゃに破壊された船体を見て「これは明らかに生き物の仕業だ、一体なんという化け物なのだ」と戦慄します。彼は急ぎロンドンへ戻り、ビックフォードと共に海軍省へ。提督へ怪物対策を要請したのです。直ちに下される怪物捜索命令。NATO諸国にも連絡が入ります。各国の海軍が一斉に捜索を開始。なかなか燃える場面ですなあ。

 ところがこれをあざ笑うかのように再び出現したビヒモス。たまたま目撃した農夫とその息子を全身から放射される放射線によって黒こげにしてしまったのです。

 この時ビヒモスが残した足跡の写真を調べるカーネスとビックフォード。大きさの比較用にちゃんと警察のパトカーが一緒に映っているのが親切です(笑)。二人はこれを持って王立博物館のサンプソン博士(ジャック・マクゴーワン)を尋ねるのでした。この足跡を見せて怪物の正体を調べようとしたのです。このサンプソン博士、足跡の写真を見るなり「これはパレオサウルスに似ていますね。しかし、パレオサウルスはこんなに大きくないはずだが」博士はこのヘンからニヤニヤし始めまして「でも凄いなあ、生きた恐竜か、僕はこの時を子供の頃から夢見ていたんだ」とうっとり。カーネスとビックフォード、「やべ、こいつ恐竜オタクだ」と引いております(笑)。

 さらにサンプソン博士の説明するところではパレオサウルスには電気鰻のように生体電気を発する能力があったそうな。カーネス、ぱんと手のひらを打って「そうか、あれはその電気を利用して放射能を放射しているんだ」

 「パレオサウルスを殺すのは仕方ないですけど、標本を残してくださいねー」と頼むサンプソンを残してカーネスとビックフォードは海軍省へ。提督にテムズ川を封鎖してくださいと進言します。提督は笑って「ははは、テムズ川はもう封鎖されているも同然だ。強力無比のレーダーで監視されているからな」提督、カーネス、ビックフォードはそのレーダー基地へ向います。

 レーダー基地で提督ご自慢のレーダー機器の説明を受けるカーネスとビックフォード。係官は得意そうにずらずら並んだレーダースコープを指差して、「ほら、これだけのレーダーが隙間なくカバーしているんです。見逃すなんてことは絶対にないっすよ」

 サンプソンとカメラマンのピーターが乗ったヘリコプターがビヒモスを捜索しております。「あ、あれはなんだ、水面下で何かが動いているぞ」ちゃちゃちゃちゃーんちゃちゃーんと故伊福部先生の音楽に乗りましてビヒモス出現。大喜びのサンプソンは「よし、パイロット君、ヘリコプターを降下させたまえ、近くからじっくり観察するのだ」ところが、ヘリコプター、ビヒモスからの放射線照射を食らって爆発してしまったのです。カーネスとビックフォードは愕然。しかも驚いたことにこの惨劇の最中にもビヒモスの姿はレーダーに捉えられていなかったのでした。

 提督ご自慢のレーダー群、まったく役に立たなかったという・・・(笑)。

 さて場面はテムズ川のフェリー乗り場へ。のべつ微笑みあっている馬鹿カップルとか、小さな女の子を連れたお母さん、杖をついたおじいさんなんかが乗り込んでおります。車も一杯乗せてさあ、出発だ。しかし、ここでビヒモス出現。ビヒモスはフェリーにどっかと乗りかかりついに転覆させてしまったのです。「うわあ」「ひい、わしゃカナヅチなんじゃ」「助けてくれー」と悲鳴を上げながら投げ出される乗客たち。そのままみんながぼがぼ溺れ死んでしまうというまさに地獄絵図。おまけに水死体の顔がケロイドだ。

 これが死者36名、行方不明50名の大惨事となりまして、ついに英国はビヒモスとの戦いを決意したのであります。

 軍隊が街中へ展開。住民の避難が始まりました。海軍省ではビヒモス対策会議が始まります。ビヒモス戦総責任者のチャールズ・ムーア提督が「ビヒモスは爆弾でやっつけよう。飛行機で投下させればイチコロだぞ」しかし出席していたカーネスとビットフォードは大反対。「あんた、何を言うておるのですか。ビヒモスは放射能の塊ですぞ。そんなもの爆弾でばらばらにしたらロンドン中が放射能汚染されてしまいます」さあ、困った、何かいい手はないのでしょうか。「はい、先生」ここで若手の大佐が手を上げます。「私にいい考えがあります」ムーア提督、「誰が先生だ」と軽く突っ込んでおいて「なに、いい考え、うむ早く説明しなさい」「大樽に酒をなみなみと注いで並べます。するってぇと上陸してきたビヒモスが、こりゃ、いいものがある、ゴチになりましょうってんでがぶがぶやりますな。そして酔いつぶれたところを・・・」「ヤマタノオロチじゃないっての」苦りきるムーア提督です。

 紛糾する会議ですが、ついにカーネスが妙案を発表します。「ビヒモスは自身の放射能でいずれ死ぬでしょう。そこでそのラジウムを撃ち込んでその最後を早めてやるのです。奴が水中にいる間、魚雷でラジウムを体の中に埋め込むのです」「よっしゃ、そのアイデア頂き!」とムーア提督が叫んでようやく作戦が決定したのでした。

 さあ、いよいよビヒモスとの戦闘が開始されます。テムズ川からドバーッと上陸してきたビヒモス。威風堂々とロンドンの街を闊歩します。さっき非難した筈のロンドン市民がいつの間にか沸いてきてきゃーきゃー言っているのが面白いですな。逃げ惑うロンドン市民、ぐしゃりと車を踏み潰すビヒモス、機関銃を乱射する軍隊、エキストラの数が実に多いものでこの辺は迫力がありますな。あ、ビヒモスが得意の放射能を放った。ひょひょひょひょーん、倒れふす無数の市民達、兵士たちもミイラになっちゃった。ひでー、市民はともかく兵士には防護服着せとけよと思います(笑)。

 ビヒモス、かさにかかってロンドンを蹂躙するのでありました。火の海と化すロンドン、ああ、このまま英国はビヒモスの前に屈するしかないのでしょうか。

 いや、ここに最後の希望あり。防護服着こんだビックフォードが手ずから誂えたラジウム弾頭付魚雷であります。これを小型潜水艇に積み込んでビヒモスがテムズ川に入るのを待っております。そして、ついに破壊に飽きたビヒモスが水中に戻った。「よし、出撃だ」潜水艇に艇長と二人で乗り込むカーネスです。

 ビヒモスの放射能を頼りに狙いを定め「もうこれ以上お前の好き勝手にはさせん、正義は必ず勝つ」と叫んだカーネス、魚雷を発射。狙い過たずビヒモスの口に命中です。大爆発が起こってもがき苦しむビヒモス。その目から光が消えてついに稀代の大怪獣ビヒモスはその姿を海底に消したのです。

 帰還したカーネスを迎えたビックフォード。二人で仲良く車に乗り込みます。「帰って一杯やって風呂入って寝よう」車をスタートさせたところでラジオから「アメリカのフロリダの海岸に無数の魚が打ち上げられました」というニュースが。愕然となる二人の姿で映画は終わります。

 確かにビヒモスはデザインも動きもダサい。しかしそれを補ってあまりあるのが大迫力のロンドン市街戦です。特撮と実写のコンビネーションが上手く本当に怪獣を迎え撃っているかのようなリアリティがあって…ちょっとホメすぎですか(笑)。

 モノクロ・スタンダード モノラル音声。画質は黒の表現に優れるもののノイジーで高得点はあげられません。音質は品位が高く実に聞きやすいです。Cult Camp Classics 1 - Sci-Fi Thrillers 『妖怪巨大女』『海獣ビヒモス』『惑星X悲劇の壊滅』を収録したボックスセット。ワーナーホームビデオのDVD

 エロの冒険者 

       HOMEPAGE http://homepage3.nifty.com/housei/

      SFシネクラシックス 輸入DVDでみるSF黄金時代(笑)

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