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2008年3月 2日 (日)

『エド・ウッドの牢獄の罠』(『Jail Bait』 1954年)

 

『エド・ウッドの牢獄の罠』(『Jail Bait』 1954年)

 エド・ウッドの手によるものだとはとても思えぬマトモな映画。だけど、それだからといって面白いってことじゃありませんので勘違いしないようにしてください。

ここはロサンゼルス警察。おりしも姉マリリン・グレーガー(ドローレス・フラー)が保釈金を払って拳銃不法所持で拘留されていた弟ドン(クランシー・マローン)を受けだしたところ。その二人を見ているのが警視正のジョーンズ(ライル・タルボット)と警部補のローレンス(スティーブ・リーブス)。ジョーンズは苦々しげに「やつのおとっつぁんはそりゃ、立派なお人よ。お医者としても腕も良いし、なにより人間が出来ていなさる。ところがその息子はとんだ甚六よ、えりにもえって悪党のヴィック(ティモシー・ファレル)なんぞとつるみやがって、そのうち、何かやらかすにちげえねえ。おう、ローレンス、奴から目を放すんじゃねえぜ」「へい、合点でさあ」

  その警視の見立てどおり、家に帰るなり本の中の切り込みに隠してあった拳銃を取り出すドン。「ちょいとお待ち、ドン、あんたこんな夜中にどこへいこうというんだい」と止めるマリリンを振り切りまして向ったのがある酒場。そこで待っていたのがヴィックであります。「おう、やっと出てきたか、ほれ、これはおめえの取り分だ、受け取ってくんな」ああ、なんということでしょう。ドンはヴィックが押し込み強盗をやらかす間見張りに立っていたのです。その時拳銃を持っていたのを見咎められて不法所持で逮捕されたのであります。

 ここでやってきたのが先ほどの警視正ジョーンズと警部補ローレンスのコンビ。彼らはドンとヴィックの両隣に座って「これはこれはドンとヴィックの旦那じゃねえか、ふふふ、悪巧みの相談かい。まったくおとっぁんはあんなに出来たお人なのにその息子がどうしてこうなっちまうかねえ」とかイヤミたらたら(笑)。そしてジョーンズ、声を荒げて「さあさあ、二人とも帰るんだ、滅多なことしやがったらただじゃおかねえぞ、とっ捕まえて懲役二兆年にしてやるからな」ほうほうの体で酒場から逃げ出すヴィックとドン。

 しかしジョーンズとローレンス、二人が酒場にいることがどうして分かったのでしょうか(笑)。

 ドンはこれでビビッてしまいまして「なあ、ヴィック、おらあいやな予感がするんだ。それに逮捕されて写真も指紋も取られちまったし、今夜の劇場の仕事はやめにしねえか」しかしヴィックは「何トンチキなこと言ってやがんでぇ。これは2万ドルの仕事だ。こんな美味しい獲物をむざむざ逃してなるかってんでぃ」

 悪党二人が狙っているとも知らず劇場ではコットン・チックの床屋漫才「お客さん、クリスマスはどうしますか、彼女としっぽりデートですか」「いやあ、そんなものいないんでねえ、クリスマスは寝正月ですよ」(バカルディ、現さまーずのネタ)でどっかんどっかん受けてます。どうも暢気なものであります。

 一方、グレーガー家ではパパ(ハーバート・ローリンソン)がご帰宅。交通事故でぐしゃぐしゃになった青年の顔を整復手術してきたそうで疲れ切っています。しかし安穏と休むことはできません。マリリンが「ドンが拳銃持って行った」と訴えたからです。がっかりしたパパ、ソファーに座り込み「お上に届けた方がいいかも知れんが心が定まらぬのだ。ああ、せがれの教育を間違えてしまった」

 さて今夜の出し物が終わってお客さんが帰った後の劇場に車で乗り付けるドンとヴィック。大胆にも覆面や手袋なしで拳銃構えて押し込みます。夜警のおじさん マッケンナ(バド・オズボーン)に拳銃を突きつけて「やい、金庫を開けるのだ、開けねえと蜂の巣にしてくれるぞ。間違えて蜜蜂が戻ってくるような体にしてやるぞ」マッケンナ、恐れをなして金庫を開けるのでした。ヴィックとドンは中に入っていた札束をみて「へへへ、お宝は何時見てみたまらねえな」ほくほくしております。

 ところがこの時最悪のタイミングで給料計算のために残業していた女性社長秘書がやってきたのです。びっくりするドン。この隙を狙ったマッケンナ、彼の拳銃を奪おうとしたのですが、逆にドンに射殺されてしまいましたとさ。秘書の方は「ひい、人殺しだよ、だれか助けておくれ」と叫んで逃げ出します。彼女に追いすがったヴィック、後からズドン、ズドン、ばったり倒れる秘書。この時早くもパトカーのサイレンが聞こえてきたので慌てたヴィック、女の生死を確かめずに逃げ出してしまったのです。

 ドンとヴィックは車で逃走します。パトカーに追われますがなんとか巻いて逃げることができました。ホトボリをさますためにそのままヴィックの自宅に篭ることになります。


 さあ、間髪をいれずに始まる警察の捜査。なんと社長秘書は生きていた!この女が早くも翌日にはジョーンズ警視正とローレンス警部補の事情聴取を受けて「はい、警察の旦那さん、下手人はこの二人です」ってドンとヴィックの写真指差しちゃった(大笑い)。だから覆面ぐらいしろっての。「警視正、ドンの奴、やっぱりやりやがった。強盗殺人と殺人未遂だ」警視正はそれに付け加えて「殺された警備員のマッケンナは元警官だ。つまりドンは警官殺しってことにならあな」

 いや、それはちょっと違うんじゃないかなあ(笑)。

 自分のしでかしたことに大ショックを受けたドン、隠れ場所であるヴィックの自宅から逃げ出します。ヴィックは彼が余計なことを言うのではないか、だったら今のうちに捕まえて殺してしまえとブッソウなことを考えて彼の行方を追うのでした。そのドン、さ迷ううちに足が向いたのがパパの病院。「おや、どうしたんだい、珍しいじゃないかえ」と迎えてくれたパパの優しさにぐっとなって「おとっつぁん、おいら、飛んだことをやらかしちまった。人を殺めてしまったんだよ、おまけにヴィックの野郎がおいらを口封じで殺そうとしているんだ」物凄い告白をされてパパ、仰天します。

 パパは涙ながらに「せがれや、こうなったら仕方ない、いさぎよく自首しないかね」「うん、おとっつぁん、そうするよ」この時やってきたのがジョーンズ警視正とローレンス警部のコンビ。たった今「自首するよ」と言ったのにも関わらずドンは慌てまして「おとっつあん、おいらをかくまっておくれ。ここで捕まりたくないんだ。あとできっと自分で警察に行くから後生だよ」パパ、とっとと引渡してしまえば面倒がないのについつい息子への情にほだされまして息子を別室に隠してしまうのでした。そして二人の刑事には「せがれが人を殺めたことは知ってます。でもここにはおりませなんだ。後できっと自首することでしょう」なんて言っちゃうの。パパの言葉を真に受けて帰ってしまうジョーンズとローレンスもなんだかなー。この病院に見張りぐらいつければいいじゃないかなー。

 この後パパと別れて警察へ向うドン。しかし彼を待ち構えていたヴィックが拳銃を突きつけて「やい、おとなしく俺の家にきやがれ」と拉致してしまったのです。

 ドンはヴィックに「おいらもおめえももう逃げられねえ。二人で一緒に自首しようじゃないか」もちろん、ヴィックが同意するはずはありません。「ふん、おまわりを殺めたのはおめえだ。おいらじゃねえ。おいらが撃った女は死んじゃいねえんだ」この時タイミングよくニュースから劇場襲撃事件のニュースが流れます。もうちゃーんと警官殺しがドン、女の殺人未遂がヴィックと放送されてしまうのがおかしい。これでドン、やけになりまして「ヴィック、本当に逃れる道などありはしないのだ。おいらはケリつけるぜ」彼は踵を返して出て行こうとします。ついに切れたヴィック、ドンに向けて拳銃を乱射。ばたりと倒れるドン。

 ヴィックの愛人ロレッタ(セオドア・サーマン)はびっくりして「あんた、こんな仏こさえちまってどうするんだい」にやりとするヴィック。「夜に川に流すのよ。それまでどこかに隠しておくんだ」

 二人は死体をカーテンで仕切られただけのシャワールームに隠します。どうしてそんな分かりやすいところに隠すかねえ(笑)。その後二人はどうやって警察の目を逃れるか相談します。「でもそんなこといったって、あんた、警察はあんたの顔写真を持っているんだよ」これでヴィック、ぴんと閃きます。「顔写真か、そうかおいらの顔を変えてしまえばいいのだ。よし、善は急げだ、ドンのおとっつあんに電話するのだ」えー、皆さん、覚えていらっしゃるでしょうか。ドンのパパは有名な整形外科医だったのです。交通事故でぐしゃぐしゃになった青年の顔を見事整復してみせるほどの腕を持っていたのです。おお、エド・ウッドの映画で初めて伏線がちゃんと機能したぞ!

 ヴィックは電話でドンのパパに自分がドンを捕まえていること。言うとおりにしなければ彼の命がないことを話します。そしてしめくくりに「ええい、つべこべ言わずに今晩7時にきやがれ。そしておいらの顔を手術するのだ!」

 パパは逆らうこともできず、その命令に従うことになってしまいます。彼は助手として娘のマリリンを連れヴィックの家へ。ヴィックは手術が成功したらドンを帰してやるといい、今すぐ始めるのだと要求します。頷いたパパ、医療カバンの中からペンチ、やっとこ、ハサミ、ノコギリ、トンカチを取り出します。これを見てぎょっとするヴィックがおかしい(笑)。一方マリリンはクロロフォルムをしみこませたガーゼでヴィックを麻酔。いい加減な麻酔だ。これをピストル構えて油断なく見張っているロレッタ。

 手術に必要なお湯を調達するためにキッチンに行くパパ。大き目の鍋を探すうちについついシャワールームのカーテンを開けてしまいます。中からどてーっと倒れてくるドンの死体(大笑い)。パパは愕然としますが何も気づかない振りをして死体を元に戻しヴィックの手術に取り掛かったのです。はい、あっという間に手術終了。パパはロレッタに「手術はな、成功したからな、ちゃんと薬を飲ませなさい。ちゃんとしないと命に関わるよ。そうして二週間たったら包帯を外すのでうちにきなさい」

 ここでだいたいオチが分かりましたね。

 ロレッタ、二週間ヴィックを看護します。そしていよいよ今日がその日となりました。ちゃんと約束どおりにパパの家へいく二人。律儀な悪党です。しかし、この時パパはパパであの今ひとつ役に立たないジョーンズとローレンスのコンビを電話で呼び出していたのでした。「一体全体何の用だってんだ」といぶかしむジョーンズであります。

 ヴィックとロレッタ、いよいよ包帯が外されるというのでわくわくどきどきしています。「お前さん、失敗なんかして人三化七になっていたらどうしよう」「その時は医者をぎたぎたにするまでよ」と、この時ジョーンズとローレンスがやってきました。彼らは顔面を包帯で覆われた怪しい男を見て「ややや、貴様、何者だ、名を名乗れ」・・・じゃなかった「おめえ、ヴィックだな、ここで会ったが百年目、大人しくお縄につけぇ!」しかしヴィック、少しも慌てず騒がず、「は、ヴィックですと、そんなコンコンチキは知らねえなあ。おいらは別人だぜ」ロレッタも「警察の旦那、いきなりこの人を罪人呼ばわりして何のつもりだい、訴えるよ」と鉄火な啖呵を切るしまつ。

 おまけにドンのパパすら「旦那方、この人はヴィックではないですよ」と言うではありませんか。憮然とするジョーンズとローレンス。「今、顔をごらんにいれましょう」包帯にハサミを入れます。ちょきちょき、ちょき、ちょきちょき、ちょき。「はい、確かにヴィックではないでしょう」ジョーンズとローレンス、息を飲みます。ヴィックは大得意で「ははは、どうです、おいらはヴィックなんかじゃなかったでしょう」そんな彼を無視していきなり「ちょっと女性秘書のあなた、こっちへ来ておくれでないかい」と叫ぶジョーンズ。え、この人はドンのパパに電話貰って「何の用だろ」と言っていた筈ですがね。なんで目撃者を連れてきていたか分からないですね(笑)。

 走ってきた女性秘書、ヴィックの顔をみるなり「この人です、この人です、警備員を撃ったのはこの人です。間違いなんかありゃしません!」愕然としたヴィック、パパが持っていた手鏡を奪って自分の顔を覗き込み「ギャーッ、おいらの顔がドンになっちまってる!」そう、パパはヴィックの顔をドンそっくりに整形していたのでした。狂乱したヴィックは立ち上がり、「おいらはドンじゃない、ドンじゃない」逃げ出します。そして立ちふさがった警官をピストルで射殺、外に飛び出すのですが、他の警官に撃たれてプールにじゃぼん。彼の死体がぷかーっと浮いたところでエンドマーク。

 演出がとてつもなくタルイということを除けば(笑)ちゃんと映画してます。とてもあのエド・ウッドの映画だとは思えません。

 モノクロ・スタンダード モノラル音声。画質は黒浮きが酷いですが、このレーベルとしては平均的な出来か。音声はノイズが少なく非常に聞きやすいものです。国内盤 日本語字幕付。レトロムービーコレクション 有限会社フォワードのDVD

      エロの冒険者
       HOMEPAGE http://homepage3.nifty.com/housei/
      SFシネクラシックス 輸入DVDでみるSF黄金時代(笑)

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