« 『ヴィンセント・プライスのザ・バット』(『The Bat』 1959年) | トップページ | 『In Hot Pursuit』(『Polk County Pot Plane』 1977) »

2008年7月 4日 (金)

『怪人ブリーム博士』(『The Sphinx』 1933)

 『怪人ブリーム博士』(『The Sphinx』 1933)

口のきけぬはずの男が殺人現場で喋った!この不可解な謎に完全と挑む刑事たち、しかし、その秘密はみんな思っていた通りのアレだったという…。もう1930年代の映画だから許されるのであって、これが現代なら、そんなアレがトリックなんて今時こんな古臭いことやりやがってと観客が激怒、映画館を占拠してチケット代の払い戻しを要求したりするかも知れませんな。

スフィンクスにライオネル・アトウィルの顔がついているタイトルバックに大笑いさせられた後、映画の始まり、始まり。午後9時、ここはとあるオフィスビルの中、ガーフィールド投資会社のドアが開いて一人の男ブリーム氏(ライオネル・アトゥイル)が現れます。彼は「あんた、どこから来ただね。もうビルは閉まっておるんだが」とびっくりしている掃除夫のルイジ(ルイス・アルバーニ)についと近づくと「マッチの火を貸して貰えませんかな。それと今、何時だね」ルイジはもごもごと「今、9時ですだ」と答え彼にマッチを差し出します。それで煙草に火をつけたブリーム氏、紫煙をくゆらすと「んじゃ、さよなら」エレベーターに乗って降りて行ってしまいました。不審に思ったルイジ、ガーフィールド社のオフィスのドアが開きっぱなしになっているのを発見します。恐る恐る中を覗いてみますと、はい、死体が転がっておりました。

 ルイジは急いで警察に電話。やってきたのがジェームズ警部(ロバート・エリス)、ホーガン刑事(ポール・ハースト)、ケイシー刑事(ジョージ・ギャビイ・ヘイズ)の面々。彼らは死体を調べまして「死後1時間くらいだな」「死因は絞殺だから、ひょっとしたらこれは例の連続絞殺魔の・・・」なんてことを話しております。ここでクロニクル紙の新聞記者ジャック・バートン(セオドア・ニュートン)が登場。「マスコミは困る、現場に入るな」というケイシー刑事に「今夜も殺人っすか」と話しかけます。ケイシー刑事は「何で殺人っていうんだ」「いや、それが市の人口調査結果を見たら一人減っているもんで」「じゃあ、お前を二人目にしてやるよ」と凄むケイシー。逆にジャックはにこりとして「じゃあ、やっぱり殺人なんですね」だって。

 これでまんまとケイシー刑事をやりこめたジャック。現場に図々しくも入り込んでしまいます。「何だ、お前は」という顔のジェームズ警部に軽く挨拶して、「うーん、ガーフィールド投資会社ね、どっかで聞いたような気が・・・、ああ、そうだ、これは仲間の株仲買人にお金を持ち逃げされて倒産した会社っすよ。」実はこのところ、三人連続で同じく株の仲買人が絞殺されるという事件が起こっていたのです。ジャックは拳をぱちんと反対の手に打ち付けて「株の仲買人を調べればいいじゃないですかねえ」

 こんなこと言われてジェームズ警部、渋い顔。「何だね、鬼の首を取ったように、そんなアドヴァイスはいらん。我々は有力な証人を確保しとるのだ。彼は犯人らしき男に時間を聞かれたと言っておる。署に戻って彼に前科者リストを彼に見せればいいだけだ」

 さて、翌日クロニクル社へ出社したジャック。同僚の女記者ジェリー・クレーン(シェイラ・テリー)と何時もの軽口を叩き始めます。「ねえ、君は一体何時になったら僕と結婚してくれるんだい」ばかもーん、朝からこんな会話する奴がどこにおるか、ああ、ここにいたァってなもんだ(笑)。とここで現れたのが昨日の刑事、ホーガンであります。彼は嬉しそうに「もう犯人見つけちゃったもんねー。ルイジの証言で見つけちゃったもんねー」驚くジャックに写真を差し出します。「へえ、これが犯人か、どれどれ」しかし写真を見た瞬間、ジャックはむっとして「犯人じゃないだろ、こんなの記事に使ったら訴えられちゃうよ」

 実はルイジが犯人と証言した人物、ブリーム氏は慈善家として有名な大金持ちだったのです。ジェリーもびっくりして「こんな立派な人がそんな大それたことする筈はありませんわ。それに何より彼は聾唖なんです。喋れないですのよ」ホーガンはちょっと困った顔をしますが「何、裁判で全て明らかになりますよ、わっはっは」帰ってしまいました。

 ここから時間がぱっと流れて裁判の開始となります。検察側の証人としてルイジが呼ばれ被告席のブリーム氏を指差して「確かにこの人ですだ。確かにこの人に時間を聞かれましただ」ところがこの後ブリーム氏が生まれつきの聾唖者であることが担当医によって証言され形勢一気に逆転。ついに無罪判決が下ったのです。面目丸つぶれでしょぼーんとなるジェームズ警部たち。逆に大喜びのブリーム氏、弁護人。まあ、確かに勝てる裁判ではありませんでしたな。

 この裁判におけるルイジと弁護人のやり取りが面白い。弁護人、「あなた、ひょっとしたら酔っていたんじゃないですか。ウィスキーなんぞやっておったんじゃないですか」ルイジ、首を振って「おら、ウィスキーなんて飲んだことぁねえ」にやっとして「ジンだけだ」傍聴の人々大笑い。弁護人、「あなただって間違いをおかすでしょう」「おらの一生で唯一つの間違いは・・・今の女房と結婚したことだなあ」また大笑いの傍聴人たち。こういう描写は楽しいですね。

 嫌疑が晴れたブリーム氏、実はジェリーはこの人の大ファンでしてさっそく、「じゃあ彼のインタビューを記事にするわ」と言って屋敷にいそいそと出かけていくのです。これが面白くないジャック、なんとかブリーム氏の怪しいところを見つけようとしてクロニクル紙で事件の情報提供者に謝礼をすると宣伝したのでした。

 屋敷についたジェリー、執事兼ブリーム氏の手話通訳者であるジェンクス(ルシアン・プライバー)に迎えられます。そして中へ案内されてさっそくインタビューの開始。しかし出身地や誕生日を聞こうとする彼女を柔らかな笑顔で遮るブリーン氏。なんと、彼は取材に備えて全ての個人情報を書類に纏めていたというのです。だからインタビューはもう十分、それよりあなたのことを話してくださいとジェンクスを通じて彼女に伝えるブリーム氏であります。頷いたジェリー、言われたとおり自分のことをしゃべり始めます。この様子がいかにも楽しげ。おいおい、ジャック、大変だぞ、酒場でルイジに会ってつまらない話をしている場合じゃないぞ(笑)。

 ブリーム氏とジェリーの会話を終わらせたのは突然訪問したワーナー(ポール・フィックス)という人物でした。このワーナー、彼を迎えたジェンクスに「私に会った方が身のためですぞ」とか言ってます。大変怪しいです。

 一方、ジャックはジェームズ警部のオフィスへ。そして彼は「大変ぶしつけな申し出で恐縮なのですが、私はこれからワーナーという人物に会います。ここで待ち合わせているのです」へ?ワーナーってさっき出てきた男?一体何が起こったのだろう。「うちの新聞社で事件の情報提供者に賞金をかけたのです。彼はそれに応募してきたのです。警部、あなたは別室で私と彼の話を聞いていてくれませんか」

 まあ、新聞社からの情報提供の呼びかけに応じてなぜか記者と警察署で待ち合わせというのはオカシイのですが(笑)。

 ジャック、約束どおりに現れたワーナーを迎えます。打ち合わせ通りジェームス警部に別室に行ってもらってジャックが面談。ところがこのワーナー、飛んだスーダラで「僕、これからデートなんです。だから今晩の8時半に私の家へ来てください」だって。

 定石通り、ジャックと警部に先回りしてブリーム氏がワーナーの家を訪ねる訳です。ワーナーの部屋を訪ねたブリーム氏、帰り際に彼の母親に向かって「ところで今何時ですか」といきなり質問。聾唖の筈のブリーム氏がいきなり喋ったもので驚きのあまりお母さん、卒倒します。そして当然ながらこの時ワーナーは殺されており、後からやってきたジャックと警部を「仕舞った、口を封じられた」と悔しがらせることになります。

 お母さんから話を聞いた警部、「チクショー、ブリームが喋っただと、前の事件と一緒じゃないか、やっぱり彼が犯人なのだ」と叫んで二人でブリームの屋敷に押しかけるのでした。ところがブリームと執事は鋭い警部の追及にもぬかに釘、暖簾に腕押しで、まったく動揺する様子がありません。それどころか「事件のあった午後8時半、ブリーム様は風邪で伏せておられました」なんてアリバイを証言されちゃった。考え込んだ警部、いきなり懐から拳銃を取り出して窓の外に向けてバーン!ジャックと執事はびっくりするのですが、ブリームはまったく反応しません。むむ、やはり彼は耳が聞こえないのか。

 ジャックは「ああ、びっくりした、警部、目ん玉繋がりのおまわりさんじゃないんですから、いきなりピストル撃たないでくださいよ」彼は無意識に置いてあったグラウンドピアノの鍵盤に指を走らせます。これをみたブリーム、拳銃の発射音にはまったく反応しなかったくせに、この何気ない行為にぎょっとしているではありませんか。これを見咎めた警部、屋敷を辞するとジャックに「多分、ピアノの音に秘密があるのだ。私はこれを調べてみるから、君は明日の朝、私のオフィスへ来たまえ」

 といった警部がその夜のうちに殺されてしまうという・・・。

 ジャックは警部の後釜となったホーガンに昨夜のピアノの件を伝えます。「彼は何かに気がついたのに違いないんだ。そして秘密を知られたと思ったブリームが彼を殺したのだ」ここでジャックははっと顔色を変え「不味い、いまジュリーが彼の記事を連載している。取材でうっかり彼の秘密を知ってしまったら殺されてしまうぞ」ホーガンとジャックはジェリーを呼び出して「あいつはアブナイから近づくな」と説得したのですが、すでにブリームの人柄に魅了されているジェリーは聞く耳持ちません。「ンマー、あの人が人殺しですって、そんな訳ないじゃない。それにあたし、あの人が好きなの、だから好きな時に会うのよ」会うのをやめるどころか今夜はディナーの約束があるといって出て行ってしまうのです。

 ホーガン、仕方なくブリームの屋敷を部下に見張らせることにします。

 ジェリーは約束どおりブリームにディナーをお呼ばれ。食後、二人はソファーに移って執事に手話通訳してもらいながら楽しく語り合っております。「連載が終わったら取材にこれなくなります。今までのように会えなくなるのでとても残念ですわ」「いえいえ、そんなことはありませんよ、これまでどおり遊びにいらっしゃい」「まあ、嬉しい」とかなんとかやっとる訳です。この会話に疲れた執事、外へ出て一服つけるのですが、この時見張りの刑事に気がついた!彼は急いでブリームに知らせようとするのですが、この時ブリーム、密かにジェリーの髪の匂いをかいでカフーっとなっております(笑)。さあ、もっとカフーっとなろうってんでジュリーを口説こうとした彼を執事が引っ張り出して「おい、刑事がいるぞ」と囁いたのでした。

 ジェリー、ブリームが執事に引っ張っていかれたので手持ち無沙汰となりまして、ピアノを弄びます。ぽろんぽろんと指を走らせ一番左端の鍵盤を押した瞬間、何かのスイッチが作動。隠し扉がスライドしたのです。その中にいたのはブリームと瓜二つの男。「ひーっ」驚きのあまり悲鳴を上げるジュリー。

 この悲鳴を聞いて刑事たちはホーガンに通報。ジャックも駆けつけます。そして屋敷を隅から隅まで調べのですが彼女の姿を発見することはできません。ブリームは余裕の態度で「彼女は裏口から出て行きましたよ」とふんぞりかえっています。そんな重要なゲストを裏口から帰したりするもんかとジャック達は思うのですが、彼女を発見できない以上、その証言を否定することもできません。思案に暮れるみんな。そのときついとホーガン警部がピアノに近寄ります。彼はジャックに「私は音楽なんかとは無縁だと思うだろ。それが違うんだなあ、ピアノをぽろんぽろんやりながら考えるといいアイデアが浮かぶのさ」

 どうしてこの映画の登場人物たちはピアノがそんなに好きなんだ(大笑い)。

 ホーガンはピアノをデタラメに鳴らします。その指がだんだん右に寄って行くのでブリームははらはら。あ、押した!と思ったらその直前でホーガン、ピアノを弄るのをやめてしまったという・・・。ホッとするブリームでしたが安心するのはまだ早かった。ホーガンの葉巻から灰が鍵盤にこぼれます。彼がそれを払おうとしてついに例のキーを押してしまったのです。ぐーっと開くスライドドア。中にいたブリームそっくりの男はわっと逃げようとしますが警官のピストルによって射殺されてしまいます。隠し部屋の中に捕らわれていたジェリーも無事救出されたのです。

 観念したブリーム、ついにぺらぺらと喋りだします。「そうさ、一連の犯行はおれがやったのだ。そして本当の聾唖である双子の弟を使ってアリバイを作ったのさ。おれは他の仲買人たちと共同投資していた。しかし奴らは俺のやり方が気に入らなかったのだ。そしてワーナーは裏切り者だった」ここで彼は手錠を掛けられた手を胸に押し当てる奇妙な仕草。彼はうっと呻いて倒れ絶命するのです。彼はスイッチを押すと毒針が飛び出してくる仕掛けのある指輪を使って自殺を遂げたのでありました。

 ラストはおきまりのジャックとジェリーのキスシーン。それも「これで結婚してくれるね」というポロポーズつきなのですからイヤになります(笑)。

お察しの通り双子の兄弟が替え玉であったという…。またピアノの仕掛けは面白いですが、何もあんなに人が触りそうなところにスイッチつけることはないと思います。もっと目立たず人が絶対触らないような、そう、壁に掛かっている絵の裏にでもつけておけばいいんじゃないですかねえ。

モノクロ・スタンダード。意外に良好な画質。黒がちゃんと沈んでいます。台詞も聞き取りやすく、すべてのDVDはすべからくこのレベルを保ってほしいものだと思います。国内盤 日本語字幕付。レトロムービーコレクション 有限会社フォワードのDVD。

      エロの冒険者
       HOMEPAGE http://homepage3.nifty.com/housei/
      SFシネクラシックス 輸入DVDでみるSF黄金時代(笑)

|

« 『ヴィンセント・プライスのザ・バット』(『The Bat』 1959年) | トップページ | 『In Hot Pursuit』(『Polk County Pot Plane』 1977) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 『怪人ブリーム博士』(『The Sphinx』 1933):

« 『ヴィンセント・プライスのザ・バット』(『The Bat』 1959年) | トップページ | 『In Hot Pursuit』(『Polk County Pot Plane』 1977) »