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2009年3月 2日 (月)

『空飛ぶ生首』(『Tormented』 1960年)

 

『空飛ぶ生首』(『Tormented』 1960年)

 お馴染みミスタービック、バート・I・ゴードン師匠の映画です。と言ってもこの映画では巨大なものが出てくる訳ではありません。女の生首がひらひら飛び回り、自分を裏切った男を責め苛むというどちらかというと日本の怪談に近いお話であります。

夜の海をバックにオープニングクレジット。これが終わると主人公トム・スチュワート(リチャード・カールソン)のナレーションで物語が始まります。「私はこの島を愛していた。平和と静寂の島だった。あの夜ヴァイ(ジュディ・リーディング)に呼び出されるまでは」このトムという男、将来を嘱望される名ジャズピアニスト。ヴァイは彼の元恋人で現在は落ち目の歌手という組み合わせであります。ヴァイはは朽ち果てた灯台にトムを呼び出して復縁を迫ったのであります。しかしトムは彼女の願いを聞こうとはしません。「ヴァイ、もう、僕たちの関係は終わったのだ。僕はもう結婚するんだよ」これでヴァイがカッとなりまして、「あのメグと言う女ね。彼女は私より若くてしかも金持ちだわ、あんたがばあさんはしつこいとか、ばあさんは用済みだと思うのも分かるけど」ヴァイは邪悪な笑みを浮かべます。「私はあなたを離さない。私はあのあなたの手紙をまだ持っているのよ」トム、ぎくぎくぎく!「これをいろんなところに見せて回れば飛んだスキャンダル、結婚どころかあなたのピアニストの名声も地に落ちるのだわ、ほほほほほ」

それを公開するだけで大スキャンダル、ピアニスト生命も断たれかねない手紙って、一体何が書いてあるんだろう(笑)。

 ヴァイ、灯台の手すりにもたれ掛かります。ところがこの手すりが何しろ古いものですから極度にもろくなっておりまして、彼女の体重であっさり壊れちゃった。空中へ放り出されたヴァイ、かろうじて残った手すりを掴みまして「助けて、トム、私死にたくない!」トムは一瞬手を伸ばすのですが、これで彼女を助けて「ああ、トム、ありがとう、命の恩人のあなたを脅すことなんてできないわ。あの手紙は破り捨てます、どうぞ、メグさんと幸せになって」と帰って行ったのでは映画が終わってしまいます(笑)。トム、逡巡したあげく手を引っ込めて「ヒーッ」ヴァイは暗い海中へ落下したのでありました。

 場面はぱっと翌日になりまして、双眼鏡で海を捜索中のトム。と彼は波間に漂うヴァイを見つけます。彼は海に飛びこんで彼女を砂浜まで運んでくるのですが、その体がみるみるうちに海草に変化してしまったのです。驚いて目を擦るトム。と、ここで彼と遊ぼうとやってきていたメグの妹サンディ(スーザン・ゴードン)が砂浜で綺麗な時計を見つけます。彼女に時計を見せてもらったトムはまたまたびっくり。その裏面にヴァイの名前が刻まれていたからです。彼はサンディから時計を預りあの灯台へ。てっぺんに上って「あれは事故だ。私には何の責任もない、彼女は自分で落ちて死んだのだ。だから迷わず成仏してくれ、南無阿弥陀仏!」時計を海に投げ込むトム。

 この時下から誰かが登ってきた、「ヒー ヴァイの幽霊か」と怯えるトムでしたが、それは彼の婚約者のメグ(ルジーネ・サンダース)だったのです。トムはたちまち幸せモードに突入。二人で結婚式のお色直しは何回しようとか、両親への花束贈呈はわざとらしいからやめておこうとか、てんとう虫のサンバを歌う友達がいるとか、親戚の○○さんは酒癖が悪いのであまりのまさないようにしようとか、いろいろ相談しながら砂浜を歩きます。と、またも奇怪な出来事が。第三の足跡が二人をおってぽつぽつと現れたではありませんか。これに気がついたトム、恐怖して「メグ、すぐに島をでよう。豪華な結婚式なんて馬鹿らしい、二人だけで式をあげるのだ」これで事情を知らぬメグと大喧嘩になってしまいました。ふふふ、ざまあみろ(笑)。

 困ったトム、サンディを彼の部屋に呼んで「お姉さんと喧嘩しちゃったんだ、何とか仲直りできるように助けてよ」と頼みます。9歳の女の子であるメグは「分かったわ、心配しないで。もし姉さんが許してくれなかったら、私と結婚すればいいのよ」まあ、なんておませな子なのでしょう。

 サンディを返してピアノの練習をするトム。彼のピアノに混じっていつの間にかレコードが鳴っています。しかもそれがヴァイの代表曲「愛の苦悩」のレコードだったという(笑)。トムは戦慄してプレーヤーからレコードを取り去ります。そしてまたピアノ練習を再開したのですが、またレコードが鳴り出した!トムは立ちすくみます。外した筈のレコードがいつの間にかプレーヤーの上に戻っていたからです。トムは半狂乱になってレコードを叩き割ってしまいました。

 悩むトム。彼はメグたちの家のお手伝いさん、盲目のエリス(リリアン・アダムス)にそれとなく聞いてみることにしました。「エリスさん、死んだ魂が戻ってくるなんてことがあるだろうか」「幽霊のことですか、それだったら私は信じませんけどねえ、でも不動産屋やってた時分には空き部屋で不思議な体験をしたことがありますけどねえ」その不思議な体験と言うのがこの地方に伝わるサミュエル一家の怪談話。そこの子供が犬を連れて遊びに行ったきり戻ってこなかった。一家が引っ越した後、そこを借りた人は「目に見えない犬がドアを引っかく、少年の部屋がとてつもなく寒い、ベッドに濡れた海草があった」などと言って次々に引っ越してしまうそうな」

 「海草」という言葉に顔をしかめたトム、思わず「何か信じられないものが存在するんだ」と言ってしまいます。エリスは、しかし驚くこともなく「逃げても問題は解決しない。正面から立ち向かうのです」その夜、悪夢にうなされるトム、ふわふわと半透明のヴァイが彼にまとわりついてきます。「トム、トム、トム」彼はヴァイを追い払おうとするのですがどうにもなりません。そしていつの間にか彼とヴァイはあの灯台の上にいました。「やめろ、近寄るな」手を振り回すトム、と、彼は時計がかちかち時を刻む音で目覚めました。その時計とはもちろん、彼が海に投げ捨てた筈のヴァイの腕時計。おまけに朽ち果てているはずの灯台から眩しい光が投げかけられています。

 トムは灯台へ登り半ばヤケになって「君はもう存在していないのだ、もう君に振り回されるのはゴメンだ、僕は逃げない、メグと結婚するのだ」言うだけ言って気が済んだトム、灯台から出て部屋に戻るのですが、彼が出て行った後、灯台に響き渡る不気味な声「あんたは誰にも渡さないわよ」 この辺はフツーに怖いです。ゴードン師匠、なかなか良い仕事していますね。

 しかしその後も起こる怪事件。サンディにせがまれて結婚指輪を見せようとしたらその指輪を宙に浮かんだ手首が持って逃げちゃった。トムは真っ青になるのですが、サンディにはやっぱりその手首は見えないのです。さらにメグたちの家に招かれたとき、俄かに部屋の温度が急低下、甘い香水の香りが漂います。そしてメグの物凄い悲鳴。「ヒーッ、あたしのドレスが海草まみれに!なんだか溺れ死んだサーファーみたいだわ」

 思いつめたトムはハチミツを持ってきたエリスに相談します。「昔の友人でヴァイという女に灯台であった。口論になって別れたんだ。その後、彼女は島を出て行ったのだが」エリスはふんと鼻を鳴らします。「本当に出て行ったかどうか分かりませんよ、まだ島にいて昨夜のいたずらを仕掛けたのでは」この会話を偶然聞いてしまったサンディ、エリスに「トムは誰を探しているの?その人って灯台にいるんじゃないの?トム、しょっちゅう行っているみたいだから」と聞くのですが、エリスは普段の彼女には似合わない怖い顔をして「誰もいません、そしてあなたも絶対灯台へ行ってはいけません」と言うのでした。

エリスは自分で灯台へ行ってみることにします。しかし中へ入ると盲導犬のレッズがわんわんわん!怯えてついてこようとしません。仕方なく一人で灯台へ入り込むエリス。「ちょいとお嬢さん、出ていらっしゃい、隠れたって駄目よ、いるのは分かっているんだから」その時聞こえてくるフフフフという不気味な笑い声。「あ、やっぱりいるじゃない、ちゃんと分かるように話なさい。まったくもうこれだから近頃の若い人は」こういうのを○○○蛇におじずと申します(笑)。

 エリスはその笑い声に誘われるように階段を上がります。すると前の方からこしゃこしゃと囁く声が。「何、聞こえないわ」前に一歩踏み出したエリス、危うく壊れた手すりの部分から落下しそうに。ぎりぎりで体を引き戻した彼女は「全くなんて酷いことをするの」と大激怒。これからどうなるのかと思ったらそのまま帰ってしまったという・・・。

 さて、そんな怪奇な出来事を他所にトムとメグの結婚式の準備は着々と進んでおります。パパも結婚式出席のために単身赴任先から戻ってきました。でも、このパパ、どうもこの結婚が気に入らないらしく「おい、トムはどうした、何、具合が悪くて寝ている、ピアノの練習のしすぎだな、フン、だからジャズピアニストなんてよせと言ったんだ」なんて怒ってます(笑)。

 サンディはトムが灯台にいるのではないかと考えて行ってみます。でもドアを開けて中を覗き込んだらいきなり中からバタンと閉められた。驚くサンディ。と、彼女の帽子が風に飛ばされてしまいました。慌てて走って追いついたサンディ、帽子を拾い上げるとその下にあったのはきれいなペンダントではありませんか。でも、ちょっと待て!よーく見たらヴァイとか刻み込まれてないか(笑)。さらにここで新たな登場人物。船員風の若い男が彼女に「君、トム・スチュワートって知ってるかね」と聞いてきたのです。「実は彼に宝くじで20万ドル当たってね、金を届けに来たんだ」ウソに決まってます(笑)。それでサンディはトムなんて人は知らないと言ったのですが、この男ニック(ジョー・ターケル)は自分で突き止めて直接トムを訪ねたのであります。

 その用件とは、「女の船賃を返せ!」というもの。彼はヴァイをボートでこの島に連れてきたというのです。帰りに往復それぞれ5ドル、合わせて10ドルの船賃を払うという約束だったのですが、ヴァイは結局島に渡ったきり戻ってこなかった。それでヴァイが話していた「トム・スチュワート」に金を立て替えて貰おうと思ったのだとか。トムは思わず「ヴァイなんて知らん」と言ってしまったのですが、考えてみればこの男の目的は金だけ。しかも要求額はたった10ドルです。払ってしまうほうが面倒がなくていい。男は10ドル札を貰ってほくほくと引き揚げていきました。

 これで済むかと思ったらもちろん、そんなことはないのでありまして・・・。

 この男ニックはコーヒーショップで偶然居合わせたエリスとサンディの会話「まあ、サンディ、メグとトムの結婚式のリハーサルはどうしたの。もう始まっているわよ」「大変、忘れてた、すぐに行かなくちゃ」を聞いてしまったのですねえ。トムは別の女と結婚直前なのか、じゃあ、これはひょっとしたら金になるじゃん!にまーっとするニックであります。ニックは直接リハーサルに乗り込んで慌てふためくトムに「ふふふ、結婚するんだね、これはちょっと真剣に交渉しなくちゃ」

 もう踏んだり蹴ったりのトム。その夜に開かれた前夜祭パーティでも浮かぬ顔をしております。そんな彼に追い討ちをかけるように、「あ、サンディがどこかで見たようなペンダントを下げているぞ、ああ、あれはヴァイのじゃないか」「あ、メグと写真を撮って貰ったら僕たちの背後にヴァイの首が!ひいいい」もうトムはぼろぼろで、そんな彼を大変に心配するメグ。「ヘンなものが写っているんだ」と見せられた写真には何もおかしなものがなかったのでなおさらです。そんな波乱の目を含みながらパーティは終了。

 いよいよ結婚式当日の朝となりました。落ち着かない様子でピアノを弾いているトム。背後から例によって「トム、トム、トム」 「ああ、もう五月蝿いな、いい加減にしてくれ」と振り返ったトムは「しぇーっ」と叫んで飛び上がります。不気味な微笑みを浮かべたヴァイの首が空中に浮かんでいたからです。「ほほほ、私は声を取り戻したのよ、これであなたのやったことをみんなに知らせることができるわ、あなたが私を殺したのよって、これで結婚なんか絶対ムリね」「きいいい」怒り狂ったトム、いきなりマネキンに変貌したヴァイの首を掴んでタオルに包んでしまいます(大笑い)。これで外に捨てに行こうとしたら手が滑ってタオルの中の首がすってんころりん、砂浜へ転げだしてしまいました。これを拾ったのがニックですよ。トムはやばい、これで俺はおしまいだと戦慄するのですがタオルの中から出てきたのは花束と花瓶でした。

 トムはニックを話のできるところへ行こうと灯台に連れ込みます。ニックの話と言うのはもちろん金。「ヴァイはこの島にはいない、でもこの島から出て行った訳でもない。会ったのはあんただけ、へへへ、これだけ言えば分かるでしょ」というのです。そして彼が要求してきたのが金5,000ドルなり。立ちすくむトムにヴァイがニックには聞こえない声で喋りかけます。「お金なんか払ったらおしまいよ、一生付きまとわれちゃうわよ、私の時と同じく思い切ってやっちゃいなさい、ほら、あなたの後ろに鉄パイプがあるわ」トム、その言葉通り鉄パイプを取り上げてニックの頭にごっ!殴り殺してしまいました。トムは彼の死体を始末するために灯台の外へ引きずり出します。

 この後足跡が響いて階段を降りてきたのがサンディ。そう、彼女は全てを見てしまったのです。

 彼女は当然ながら深く思い悩みます。彼女がメグに「本当にトムを愛しているの、彼がどんな悪事を働いていても?」と聞くと「もちろん」と答えるものですからそれ以上何も言えません。結婚式が始まって神父さんが「この二人の結婚に意義があるものは今すぐ申し出よ」と宣言すると思わず手を上げそうになるのですが、それも途中で止めてしまいます。その代わりと言っては何ですが(笑)、いきなり教会の扉が押し開けられ強烈な寒気が襲ってきたのです。この寒気によって教会に飾られた花はみーんな枯れてしまいます。メグが持っていた花束もみるみるしおれて「ひー」散々な結婚式でありますな。

 この後もう参ってしまったトムは灯台に行って「ヴァイ、君の勝ちだ、僕はここを去って二度と戻らん」と塩らしいことを言っております。と、その時現れたのがサンディ。彼女は驚くトムに向かって「なぜ、あの人を殺したの、姉さんと結婚したくないの」今の今までここをさって二度と戻らんと言っていたトムですが、これを聞くなり「ヤバイ」 サンディに「仕方なかったんだ、お願いだから誰にも言わないでおくれ」サンディは頷きます。

 その頃サンディがいないと大騒ぎになっておりまして、パパはやっぱり「あれもこれも何もかもトムのせいだ。やっぱりジャズピアニストなんて碌なものじゃない!」メグは灯台をみて、「あ、灯台にランプの光が見えるわ」と叫びます。サンディはきっとあそこよということで一家を挙げて駆けつけるのでした。

 トムはサンディを連れて階段を上がります。「君は喋らないと約束してくれた。でも約束を守りきれるかどうかは分からない。君に喋られると僕はガス室送りになってしまう」おいおい、トム君、君は一体何を考えているのかね、うわ、こいつ、サンディを海に放り込もうとしている!でもそうは問屋が許さないじゃなかった卸さない、ここでヴァイの幽霊が登場、ふいーっとトムに襲い掛かります。これで足を踏み外したトム、「ぎょええあああひいい」と凄まじい悲鳴を上げながら落下、海に飲み込まれてしまいました。

 捜索の人たちが死後一週間を経過したヴァイの死体、そしてトムを発見します。砂浜に並んで横たえられる二人の死体。そのヴァイの指にはまっているのはおお、あの結婚指輪。

モノクロ・スタンダード モノラル音声。画質は取り立てて綺麗ではありませんが、かといって酷い、見られたものではないというほど酷くはない。簡単に言えば平凡な画質ということですな(笑)。音質はかなり良い。台詞に落ち着きがあります。WHDの国内版DVD。もちろん日本語字幕つき。

エロの冒険者 
       HOMEPAGE http://homepage3.nifty.com/housei/ 
      SFシネクラシックス 輸入DVDでみるSF黄金時代(笑)

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