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2009年8月 4日 (火)

『冷凍人間蘇る』(『The Man with Nine Lives』 1940)

 

『冷凍人間蘇る』(『The Man with Nine Lives』 1940

ボリス・カーロフの医者が冷凍療法やるって?そんなの絶対めちゃくちゃになるに決まっているじゃないか。この映画の公開当時、観客の実に98.7パーセントがこんなことを考えながら劇場に詰め掛けたそうであります。

観客の皆さんの予想は見事に的中(笑)。やっぱりボリス・カーロフの冷凍療法はろくなものじゃありませんでした。


 冒頭、医学の発達は数々の奇跡を成し遂げてきました。そして新たに冷凍療法という方法が考案され、人類に更なる福音をもたらそうとしておりますというテロップが映りまして、早速にその冷凍療法の第一人者、メイソン博士(ロジャー・プライア)の実演が行われます。重症のガン患者のおばさんをベッドに寝かせて胸の上に氷を大盛り。さらに送風機で風を送って冷やします。患者に冷やした酸素を吸わせて、体温を30度以下にすると、こん睡状態となりました。そのまま5日間放っておいて、蘇生措置を施します。おばさんはぱっちり目を開けて「あら、ワタシ、5日間も眠っていましたの?ええ、痛みは全然ありませんわ」この劇的なる症状の改善におおとどよめく観客たち。

 えー、細かいことを言うようですが、この観客達、実験開始と実験終了の間に5日間経過しているにも関わらず席の並びがまったく一緒。いやしくも映画なのですから、この辺はちょっと気を使って頂きたかったですな(笑)。

 実験の成功を婚約者で看護婦のジュディ(ジョー・アン・セイヤーズ)と祝っておりますと院長のハービー博士(チャールス・トロウブリッジ)が渋い顔でやってきた。彼は開口一番「成功おめでとうと言いたい所だが、早く公表しすぎたね。ほら、まだ実用化のめども立っていないのに患者からの治療申し込みが殺到しているよ。それにこの実験の追試は他の学者にやらせる。もう一匹狼の研究者が一人で発明するなんて時代じゃないんだ」

 メイソンとジュディはしょうがないので休暇を取る事にしたのであります。二人はこのふって湧いたような休暇を利用して前々から興味のあった冷凍療法の先駆者?クラバール博士(ボリス・カーロフ)について調べようと決意するのでした。このクラバール博士、10年前に失踪しているのですが、その前に出された著作によれば「重症のガンのマウスを零下73度で二週間冷凍しガンの成長を止めた」という成果を残しているのであります。悪性細胞を破壊するけれども正常な細胞はそのままにする適度な冷凍時間・温度の回答を求めていたメイソンですから、この調査は必然と申せましょう。

 メイソンとジュディは彼の屋敷があったカナダとの国境近くのシルバー湖にやってきます。この湖にある島に立っている屋敷を訪れるためボートを借りようとしたのですが、その目的を聞いたボート屋のオヤジが顔をしかめて「あんたたち、あんな気味の悪いところにはいかないほうがいいよ。何しろ10年前あの医者と保安官、検事、バセット検死官、ボブ・アダムスの5人がボートで島へ渡ったきり消えてしまったんだからな」これを聞いたメイソンとジュディ、「分かりました、じゃ、僕らは帰ります」ってなったんじゃ映画が終わってしまいます(笑)。二人はボート屋のオヤジの言葉など気にせずボートを借りて島へ渡ったのでした。

 屋敷の中は、何しろ10年間ほったらかしですから、もう蜘蛛の巣だらけ。二人は実験室などを調べるのですが何の手がかりもありません。と、この時異変が起こりました。ジュディが腐った床を踏み抜いて地下の部屋へ落ちてしまったのです。慌てて彼女を助けに降りるメイソン。幸い彼女に怪我はなかったのですが、二人はそこで思いがけないものを発見します。それはその部屋から続くトンネルでした。メイソンは懐中電灯を取り出してって、あれ、この人懐中電灯持ってたっけ(笑)、トンネルを調べ始めます。

 トンネルの奥にはさらに下へ続く階段がありました。それを降りてみるとついたのは秘密の実験室らしい部屋。ジュディはここで骸骨を見つけて悲鳴を上げます。メイソンはそんな彼女に構わず「ここにこそ、捜し求めていたものがあるに違いない」と大コーフン。実験室にあったランプの火を灯しそれを使ってさらに詳しく調べ始めたのです。

 程なく彼は凍りついた扉を発見します。彼はバールを持ってきてこれをこじ開けたのですが、その向こうにあったのは氷の壁。しかもその奥に人間らしい姿が見えるではありませんか。メイソン、それ、あれを助け出せというので、スコップや鶴嘴を持ってきてがんがん氷を砕きます。ほどなく助け出された人物、それはクラバール博士その人でした。しかも彼は冷凍状態のまま生きているようです。

 あわてて火を起こして彼を暖めると、はい、解凍が済みまして博士の意識が回復しました。メイソンから話を聞いて「えっ、わし、10年も寝ていたの」と驚くクラバール博士。そして博士はメイソンに聞かれるままどうして10年前に氷に閉じ込められることになったか、その事情を語りだしたのです。

 「当時、わしはアダムス氏という患者に冷凍療法を施していた。彼は重症のガンで他の医者からは見離されていたのだ。しかし、彼の甥ボブ(スタンレー・ブラウン)がわしが患者をくいものにしようとしていると警察に訴えでたのだ」それで患者が生きていることを証明しなければならなくなったクラバール博士、やむなくボブ・検死官のバセット博士(バイロン・フォーグラー)・スタントン保安官(ハル・タルアフェロ)・ホーソン地方検事(ジョン・ディルソン)をあの地下実験室に案内したのです。

 そうして得意そうに凍りついたアダムス氏を見せて「はい、どうです、凄いでしょ、これでちゃんと生きているんですよ」でもバセット博士は大いに呆れて「あんた、何を言っておるんだ、こんなの死んでいるのに決まっているじゃないか、保安官、逮捕だ、逮捕」このまま刑務所に入れられてしまっては大変です。アダムス氏は死に、研究もできなくなってしまいます。クラバール博士、「いやいや、大丈夫、今薬を調合して蘇生させるから」彼は実験室に置いてある薬品をいじり始めます。そして、完成するやいなや、がらっと態度を変えて「やい、これは蘇生薬じゃないぞ、ガスを吸っただけで人間もいちころの猛毒だぞ、へたなことしやがったらみんな死ぬぞ」ぱっと保安官が飛び掛った(笑)。

 もみあいになってクラバール博士、思わず毒薬の壜を落としてしまいます。これががちゃんと割れてもうもうとガスが発生したのです。これはたまらんと冷凍室へ逃げ込む5人。クラバール博士は冷凍室の奥から逃げられるぞ」とドアを示したのですが、これもワナ。出口などなく、その向こうにはもうひとつ冷凍室があるだけ。そうとも知らずドアをくぐる4人。クラバール博士は「むししし、馬鹿ですね」と笑って彼らを閉じ込めてしまったのです。しかし、冷凍室に閉じ込められているのは彼も同じ。出たら最後ガスにやられてしまうからです。博士はそのまま意識を失って倒れ凍り付いてしまったのでした。

 再び場面は現代に戻ります。話ながら首をかしげているクラバール博士。「おかしいな。私は自分自身にちゃんとした冷凍処置をしなかった。フツーだったらあのまま凍死していた筈だ。ああ、そうか、あの毒薬だ、偶然にも完璧な調合になっていたのだ」そんな都合のいい話があるもんですか(笑)。

 「だとすれば残りの4人も生きているはずだ。メイソン、彼らを助けるぞ」

 それからもう大忙し。4人を冷凍室から運び出して毛布を被せて暖炉の火をがんがんたいて暖めます。その甲斐あってほどなく意識を回復する4人であります。10年もの間眠っていたことを知って愕然となる皆さんにクラバール博士は「これで私の治療が正しかったことがお分かりになったでしょう。ところで患者のアダムス氏は死にました。あんたがたが馬鹿なことを言い出したおかげで意識を回復した後満足な介護を受けられなかったためです。いわば、彼は皆さんに殺されたようなもの。どう責任をお取りになるのかな」

ジュディが見つけた骸骨はアダムス氏だったのです。
 
 しかしさすがは法律の専門家、ホーソン地方検事が反論します。「失踪7年で死亡扱いとなる。つまりわしらは死人と同じ。どうして罪が問えるというのかね」しかし、それでもクラバール博士はにやにやするばかり。「なるほど、確かにそうですな。その件は不問にしましょう。ところで、皆さんは自分達の価値にお気づきかな。私は冷凍療法という医学の大革命を成し遂げた。皆さんはその貴重なる証拠なのです」彼は一枚の紙を懐から取り出して「その薬の秘密は全てここに記してある。これさえあればもはや人類はガンを恐れる必要などなくなるのだ」

 大得意のクラバール博士ですがここで意外なことが起こりました。アダムスの甥、ボブが「我々は死んだことになっているだと?だったら叔父の遺産を受けとることができないじゃないか、どうしてくれる」彼は怒りのあまりクラバール博士の手から薬の調合法を書いた紙を奪い取り暖炉にくべてしまったのです(大笑い)。愕然となったクラバール博士、思わずピストルでボブを射殺してしまいました。この事件でどうやらクラバール博士のキチガ博士スイッチが入ってしまったようで、「調合の割合はまだ、ぼんやり覚えている。忘れないうちに実験をして薬をまた完成させるのだ」

 その実験台となるのがスタントン保安官、バセット医師、ホーソン地方判事という訳で。

 彼は手伝いを申し出たメイソンが眠るのを見計らって作戦開始。睡眠薬をたっぷり入れたスープを三人に振舞ったのです。たちまち意識を失って倒れる三人。クラバール博士はその中からバセット医師を選んで冷凍療法薬を使ったのですが・・・みるみる血球が溶けてしまって、死亡。

 目を覚ました保安官と地方検事はバセットが死んだことを知って戦慄します。「次は俺たちの番だ。しかしむざむざやられはせんぞ」と手に得物を持ってクラバール博士を待ち構えたのですが、あっさりスタントンが拳銃で撃ち殺されちゃった。そして地方検事に前のものから活性剤を減らした薬を使ったのですが・・・こっちもやっぱり死んじゃった。

 考え込むクラバール博士。「一体何が原因なのだろう、そうだ」クラバール博士が閃いた!「新しい薬が彼らの体内に残っていた10年前の薬に反応したのだ。まったく薬のない人間で実験しなければならない」はい、当然ながら実験台に狙われたのがメイソンとジュディですよ(笑)。クラバール博士はメイソンを椅子に縛り付けて監禁、ジュディで実験を開始します。薬を与えて意識を失った彼女を冷凍室に運び込み山盛りの氷を胸の上に乗っけます。どんどん下がる体温。「ようし、いいぞ、いいぞ、うまくいっているぞ」と大喜びのクラバール博士。

 と、ここで警察官二人が登場。あ、二人の後ろからついてきたのはあのボート屋のおやじだ。彼がどうやら警察に知らせたらしい。おまわりさんはまずメイソンを救出。そして冷凍室へ突入します。クラバール博士は拳銃を撃とうとしたのですが、おまわりさんにはかなわず逆に撃たれてしまいました。瀕死の重傷を負ったクラバール、しかし、彼はその苦しい息の中メイソンに冷凍療法の説明を始めるのです。「ジュディの体温を測ってみたまえ、ほら、氷点下になっているだろ、でも心臓は動いている、彼女は凍っていても生きているのだ。冷凍療法薬の完成だよ」

 彼はメイソンに研究ノートを渡します。「後は君がこの療法をさらに発展させるのだ・・・ぐふっ」クラバール博士息絶えます。

 そしてラスト、大勢の研究者を集めてクラバール博士の冷凍療法が発表されます。そしてメイソンが「確かにクラバール博士は道を誤りました。しかし、彼はこの研究を続けることで人類の恩人になったのです。これからはこのわたくし、メイソンが研究をさらに発展させて参ります」

 満場の拍手でおしまい。

 モノクロ・スタンダード モノラル音声。画質はノイジーですが年代の古さを考えればいたしかたのないこと。音声も歪があります。日本語字幕付の国内版。ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントのDVD

 エロの冒険者 
       HOMEPAGE http://homepage3.nifty.com/housei/
      SFシネクラシックス 輸入DVDでみるSF黄金時代(笑)

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